ニュースリリース
【参本会議】田村まみ国民運動局長が「雇用保険法等の一部を改正する法律案」について質疑
田村まみ国民運動局長(参議院議員/全国比例)は18日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった「雇用保険法等の一部を改正する法律案」について質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
令和4年3月18日
国民民主党・新緑風会
田村まみ
雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する本会議質疑
<冒頭>
国民民主党・新緑風会の田村まみです。ただいま議題となりました「雇用保険法等の一部を改正する法律案」について、会派を代表して質問いたします。
<産業雇用安定助成金の利用率向上策>
新型コロナウイルスの感染者数が高止まりし、経済活動の停滞が続いています。そこに追い討ちをかけるように、2月末からのロシアのウクライナ侵略の影響により、エネルギーや食糧価格の高騰が続いており、今後の我が国の雇用・経済情勢が深く憂慮されます。こうした状況において、国民生活の安定のため、雇用維持の取組が最も重要であることは改めて申し上げるまでもありません。
しかし、我が国を取り巻く昨今の国際情勢が一層厳しくなる中、雇用維持だけでなく、生産性の向上や新たな産業の創出といった取組を進めることも重要です。
現在、政府においては、労働者のモチベーション維持や、キャリア形成・能力開発にもつながるとして、在籍型出向の取組を強く推進しているものと承知しています。在籍型出向は基本的に雇用維持を目的とした取組ですが、出向労働者の能力開発やキャリアアップにつながる可能性があるだけでなく、文化の異なる他社で働くという経験それ自体が、今後の労働移動円滑化に資するものであると考えています。
先月末には、産業雇用安定助成金を活用した在籍型出向の利用者数が1万人を超えたとの発表がありましたが、当初認められていななかったグループ内在籍型出向を含めても、今年度に想定した利用者数の約24%に過ぎません。
こうした状況を鑑み、在籍型出向が伸び悩んだ理由を厚生労働省はどのようにお考えでしょうか。
また、利用が伸び悩む原因については、様々な理由があるとは思いますが、一番の理由は現行の助成率が雇用調整助成金の特例水準よりも低いことにあるのではないでしょうか。利用者を増やすためには、まずは産業雇用安定助成金の助成水準を更に引き上げることが先決だと思いますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
<労働移動円滑化に向けた本法案による具体的な効果>
また、職場環境の違い等による労働者の精神的負担という側面は、今後の労働移動の円滑化促進という観点からは看過できません。そもそも我が国ではいったん会社に就職すると定年まで同じ会社で働き続けるという雇用慣行ができあがっており、総務省の労働力調査でも、30代半ば以降の転職者比率は若年層と比較して低い状況となっています。
本法案には、キャリアコンサルティングの機会の確保など、労働者のキャリア形成に向けた内容も含まれていますが、労働者本人の転職の希望などが高まらない中で、こうした施策にどこまでの意味があるのでしょうか。
本法案が、労働者のキャリア形成等に対して具体的にどのようなメリットがあり、労働移動の円滑化に対してどのような効果があると考えているのか厚生労働大臣の見解を伺います。
<教育訓練の効果を発揮する上で必要な取組>
岸田政権では、「人」への投資を掲げ、デジタル分野などにおける教育訓練の更なる充実を図るとしています。しかし、教育訓練だけで別業種などへの労働移動が円滑になると考えているのでしょうか。
厚生労働省の転職者実態調査によると、転職者を採用した理由について、「専門的・技術的な仕事」では、「経験を活かし即戦力になるから」とする回答が最も多くなっています。
「まずは経験者から採用したい」というのは企業側からすると当然の発想だと思います。「その業種での就業経験が一切ない」労働者が教育訓練を受けて資格を取ったからといって、就職環境が一挙に改善されるものなのでしょうか。職業訓練を受講した後の就職・キャリアサポートを含め、労働者を一体的に支援するようなパッケージを構築することで初めて教育訓練の効果が発揮されると考えますが、トライアル雇用助成金等の現在の活用状況なども含めて、厚生労働大臣の見解を伺います。
<国庫負担割合を現行の本則1/4に戻す必要性>
本法案では、雇用保険制度における国庫負担が見直され、求職者給付に関する国庫負担が原則40分の1となります。
そもそも雇用保険における国庫負担は、保険事故である失業が政府の経済政策・雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきとの考え方によるものです。
歴史をたどれば、かつては石炭から石油へのエネルギー転換という国の大きな政策転換があり、失業した大量の炭鉱労働者への対応が職業安定行政の大きな課題となったことがありました。
現在政府が進めているデジタル化を踏まえた産業構造の転換や、リスキリング等による労働移動の円滑化などは、国による政策そのものです。
これらの政策が今後の雇用情勢に大きく影響を与える可能性があることを踏まえれば、今回の国庫負担の見直しは整合性に欠けているようにも感じます。
国が自らの経済・雇用対策への責任を示し、雇用保険財政の安定的運営を確保するため、まずは国庫負担を現行法の本則である4分の1に戻すべきだと考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
<国庫負担を維持したまま保険料率を引き上げる背景・根拠>
そもそも今回の見直しでは国庫負担は現状維持のまま、雇用保険料率だけが引き上げられることになります。平成12年の改正では、雇用保険料率の引き上げにあわせる形で国庫負担も本則の1/4に復帰することとされました。
今回の改正では激変緩和措置として、本来よりも保険料率が低く抑えられることになりますが、国庫負担は増えずに労使の保険料だけ増えるという客観的な事実は変わりません。
国庫負担を引き上げることなく、雇用保険料率だけ引き上げることとした背景や根拠について、厚生労働大臣の説明を求めます。
<任意繰入れの実効性確保の必要性>
また、国庫負担の見直しにあわせて、国庫からの任意繰入規定を恒久化するとのことですが、繰入れが発動されるべき具体的な要件は法案の条文には一切規定されていません。
雇用保険部会報告書では、任意繰入れを発動すべき具体的状況を四つ挙げていますが、同様の内容を少なくとも政省令に規定しておくべきではないでしょうか。厚生労働大臣の見解を伺います。
<任意繰入れについて労政審への諮問を義務付ける必要性>
加えて、雇用保険部会報告書では、任意繰入れを行うべき状況に該当する場合などには、雇用保険部会に報告し、議論を行うことなどを求めています。しかし、本法案では厚生労働大臣に対して労働政策審議会への諮問を義務付ける規定が設けられていません。
任意繰入規定の発動に関して、条文や政省令に労働政策審議会への諮問を義務付ける規定を設ける、もしくは雇用保険法第72条における労働政策審議会への諮問事項の中に、任意繰入れ規定の発動に関する議論も含まれることを明確にしておく必要があると思いますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
<今後の雇用保険制度運営の在り方>
次に今回の制度見直しのプロセスについて指摘をしておきます。
雇用保険制度は、保険料の拠出者でもある労使の委員と公益委員の合議によって運営されており、当然その意見は政府においても最大限尊重されるべきであると考えます。
ところが、今回の制度見直しでは、雇用保険部会の結論が出る前であったにもかかわらず、厚生労働大臣と財務大臣が頭越しに新たな制度内容に合意してしまいました。
今回の改正は、国の義務的な経費である定率の国庫負担を縮小し、その代わりに国の裁量が強い任意繰入制度を導入するものと言い換えることもできます。
制度見直しのプロセス自体もそうでしたが、今回の見直しは、本来公労使三者の合議で決定されるべき雇用保険制度の運営の在り方そのものを変質させる可能性があると強く危惧しています。
こうした懸念に対する厚生労働大臣の見解を伺います。
<都道府県における協議会の法定化>
今回の改正では、職業訓練等に関する検討を行うため、各都道府県における協議会を法定化することとしています。
厚生労働省は、法定化により地域のニーズに適した職業訓練が実施できるようになると説明しています。
では、今回の法定化に当たって現行の職業訓練実施計画の策定プロセス自体も見直すのでしょうか。
毎年度、国に設置された中央訓練協議会で全国の職業訓練実施計画を策定し、それを踏まえて各都道府県で職業訓練実施計画を策定する。これでは国の意向が最も大きな影響を与えるという構図は変わらないのではないでしょうか。厚生労働大臣の見解を伺います。
また、現在の職業訓練計画は、地元ハローワークに求人件数が多い業種、例えば医療や介護などの人手不足産業を中心に設定されることが多いと承知しています。地域に必要な人材を供給しつつ、再就職率を高めるという観点からは、合理的な選択とも言えるでしょう。
しかし就職率という指標で職業訓練の効果を測定するなど、現行の訓練実施計画策定に関する考え方をベースにしたままでは、地域における職業訓練のコース内容の大枠は変わらない結論になることが懸念されますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
雇用保険制度は、産業構造の変化を前にした日本の労働者が未来に向けて進むための重要なセーフティネットです。引き続き多様化する雇用形態での働き方とセーフティネットを構築し誰もが安心して働き暮らせるよう全力を尽くすことを申し上げおわります。