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ニュースリリース

【参本会議】舟山筆頭副代表が総理大臣施政方針演説に対し代表質問

舟山康江筆頭副代表(参議院議員/山形県)は21日、参議院本会議において、岸田総理の施政方針演説に対する質疑を行った。全文は以下の通り。参議院インターネット中継

令和4年1月21日

政府4演説に対する代表質問

国民民主党・新緑風会
舟山 康江

 国民民主党・新緑風会の舟山康江です。会派を代表して政府4演説に対して岸田総理に質問します。

1.新型コロナ対策について

 はじめに、新型コロナ対策についてお伺いします。

新型コロナウイルスとの戦いも、はや3年目となりました。ほんの一月前までは、収束への明るい兆しが見えていたのもつかの間、オミクロン株の出現で、感染が再拡大し、過去最多の感染者数の更新が続いています。

一方で、オミクロン株に関しては、感染力は強いが重症化率は低い、との報告が相次いでいます。総理も、「過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を、冷静に」進めたいとしていますが、政府として、オミクロン株の特性をどのように分析しているか、具体的にお聞かせ下さい。

弱毒ウィルスを相手に、強毒ウィルス対策を適用し続けると、医療、社会、経済は崩壊してしまいます。客観的に分析し、重症化率が低ければ、これまでの対策を根本的に見直す必要があると考えます。

今般、ワクチンの接種証明やPCR検査などによる陰性証明を確認して行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」の一時停止の方向が決まり、現場では混乱が広がっています。「ワクチンによるオミクロン株の感染予防効果が薄い」ことが停止の理由とされていますが、ワクチン接種の目的は感染自体の予防よりも、発症・重症化を防ぐため、ではなかったのですか。官邸のホームページにもそのように書いてあります。

国民民主党は、感染対策を徹底しながらも、豊かな人間社会の回復こそが必要との視点から、「動かす」ことに重点を置くべきだと昨年から主張を重ねてきました。その観点からも、「ワクチン・検査パッケージ」は感染対策と社会経済活動の両立を図るための有効な手段であり、むしろ、検査は、エッセンシャルワーカー、一般の国民、それぞれでもっと拡充すべきです。そして、陰性を確認して動かす。重要なのは、感染者数ではなく、重症者数やその割合、死亡率であり、この数値こそ大きく取り上げるべきです。

また、現在、16都県でまん延防止等重点措置が適用され、飲食店への時短要請が行われていますが、その効果と根拠をお示し下さい。

感染症から身を守ることも重要ですが、心の健康、社会の健康をどう取り戻すか、これこそ大事な視点です。とりわけ、総理にお願いしたいのは、子どもたちへの配慮です。専門家の研究では、長引くマスク生活や行動制限による運動能力の低下や、不安やストレスなど精神的問題、発達の遅れなどが強く懸念されており、子どもの活動の制限は、できるだけ行わないように十分な配慮をお願いします。また、文部科学省が対面授業をできるだけ推進している中、依然としてオンライン主体の大学も見受けられます。

コロナ禍から豊かな人間社会を回復するためにどう取り組むのか、とりわけ、子どもたちの健全な成長に向けてどのような方針で取り組むのか、見解をお伺いします。

2.「新しい資本主義」とは

次に、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」についてお伺いします。

先の施政方針演説をはじめ、総理は、「新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え」と再三述べ、これまでの経済政策の間違いを認めています。間違いを認め、正しい方向に修正する姿勢には敬意を表します。

「格差や貧困の拡大」、「気候変動問題の深刻化」、「健全な民主主義の危機」などを、新自由主義的な政策や政治姿勢の弊害の典型として位置づけ、是正する具体策として、「新しい資本主義」を唱えているものと理解しています。

「新しい資本主義」に舵を切る上で、安倍政権、菅政権のどのような新自由主義的な政策が間違っていたと考え、どう改めるのか、具体的にお聞かせ下さい。

当初、総理は、是正策として「分配」を強調していましたが、最近は「まずは成長」と強調するようになりました。これでは、これまでの政策との違いがよく分かりません。

昨年末、フランスに拠点を置く世界各国の経済学者などによる研究グループがレポートを公表しました。この中で、「世界の上位1%の富裕層だけで、全体の4割近くの個人資産を保有し、同様に日本では25%を保有している」、との最新の調査結果を示した上で、「大規模な富の再分配なくして21世紀の課題に取り組むことはできない」として、高額所得者を対象にした「富裕税」や多国籍企業への課税が必要だとの指摘を行っています。「成長も分配も」と欲張るのではなく、まずは分配を行うべきではないでしょうか。

また、こうした現状の格差は成長のためには容認すべきものか、是正すべきものなのか、認識をお伺いします。

総理は格差是正のために、総裁選において「1億円の壁」の問題を指摘し、金融所得課税の見直しにも言及していました。「1億円」を境に、実質負担率が大きく下がる今の不公平税制を早く是正するべきであることは全く同感です。金融所得課税の見直しの検討状況はどうなっていますか?また、国民民主党が提案している金融所得の総合課税制度への移行、併せて所得税の累進強化に対する、総理の見解をお聞かせ下さい。

3.社会保障制度の再構築(中間層の復活と少子化対策に向けて)

続いて、社会保障、社会給付のあり方についてお尋ねします。

昨年末の補正予算審議において、「クーポンか現金か」で物議を醸した、「子育て世帯への臨時特別給付」は、政策目的がよくわかりませんでした。困窮者対策なのか?子育て支援なのか?困窮者対策なら、18歳以下の子育て世帯に限定する理由が不明であり、子育て支援なら、所得制限960万円未満の根拠が不明です。いずれにせよ、制度の目的と手段の整合性がとれていないと考えますが、「子育て世帯への臨時特別給付」の政策目的は何か、その手段として年齢制限、所得制限は妥当だったのか、答弁をお願いします。

そもそも、日本は、子育てに厳しすぎると指摘されています。「少子化対策やこども政策を積極的に進めていくことも喫緊の課題」であり、また、「中間層の維持」が必要と施政方針演説でも言及されていますが、そうであれば、子育てや教育への支援に対する所得制限は撤廃し、どのような所得階層であっても、子どもを産み育てることが経済的な負担にならないよう、いや、むしろ経済的恩恵を付与するぐらいの思いで、まさに、社会全体で支援するべきではないですか?

この観点でいえば、昨年5月の児童手当法の一部改正により、今年10月から年収1,200万円以上は特例給付がなくなることも、大問題です。

昨年7月、内閣官房兼内閣府の「規制改革・行政改革担当大臣直轄チーム」のメンバーによる「政府による社会給付に関わる所得制限の横断的整理と課題」というレポートが公表されています。この中では、所得制限の根拠が不明である給付や、給付後の実質的な収入の逆転現象について指摘されています。給付に当たって所得制限を付ける場合の根拠や考え方があれば教えて下さい。

加えて、トータルコストを考えた場合、仕分け等に人的・物的経費がかかる制限付き給付と、一律給付と、どちらが効果的なのかも、比較検討すべきです。

また、「103万円の壁」など、税制や社会給付が、働き方の抑制や不公平感の原因になっている側面もあります。いわゆる中間層に対しては、所得制限によって給付も限定的である上、平成23年から年少扶養控除も廃止されるなど、社会の支え手として大きな貢献をしている割には、受益があまりに少ないとの不公平感もあります。

総理、全世代型社会保障構築会議において、所得制限の矛盾や逆転現象の他、制限付き給付に要するコスト、第三号被保険者のあり方も併せて議論いただき、本当の意味で子育てしやすい環境の整備、中間層の復活に向けた大胆な支援へと舵を切って頂きたいと考えますが、いかがですか。

4.給料が上がる経済の実現

 続いて、給料が上がる経済についてお伺いします。

格差とともに問題なのは、賃金が上がっていないことです。この30年間、欧米や韓国などで賃金が上昇する中、日本の実質賃金はほとんど上がっていません。OECDの調査によると、時間あたりの名目賃金上昇率は過去21年間でマイナス8.2%。このように日本の賃金が上がらない理由は何か、また、これを改善するにはどのような具体策が必要と考えるか、お伺いします。併せて、派遣労働や外国人技能実習生が、賃金水準に与えている影響をどのように分析し、今後の対策に生かしていくか、お聞かせ下さい。

また、賃上げを促進するため、「賃上げ税制」の拡充が検討されていますが、これまでの「賃上げ税制」の効果をどのように分析していますか?法人税からの税額控除では、赤字法人や、すでに自助努力で高い賃金を実現している事業者には恩恵がないとの批判の声を耳にしています。このため、国民民主党は、年末にまとめた「令和4年度税制改革についての考え方」の中でもお示ししているとおり、賃上げ税制に関して、過去の賃上げの状況を加味しつつ、「法人税を対象にするよりも法人事業税、固定資産税を対象にした方が効果的」と考えますが、総理の見解をお聞かせ下さい。

 コロナ禍により、リスクを引き受けながらも最前線で仕事を続ける医療関係者、介護関係者、保育関係者、流通業などのエッセンシャルワーカーの方々に、私たちの日常生活を支えていただいていることを再認識することになりました。にもかかわらず、そうしたエッセンシャルワーカーの待遇は、残念ながら決して高くありません。

この点、看護師や介護職員、保育士などの賃金引き上げという政策の方向性は評価します。ただ、今年の2月から9月までコロナ医療を担う医療機関の看護師等の賃金を1%、月4,000円程度、介護士、保育士は3%、月9,000円程度の引き上げを図るだけでは、金額的にまだまだ不十分であり、また、実際に処遇改善に充てられるかも疑問です。看護師や介護士、保育士などの賃金を抜本的に引き上げるには、本来は、労働分配率の引き上げで対応すべきと考えますが、総理の所見を伺います。

賃上げへの期待が高まる一方で、ここにきて、物価は上昇に転じています。特に、企業物価指数は昨年11月にプラス9.2%、12月にプラス8.5%になるなど、10ヶ月連続で前年の水準を上回り、昨年の企業物価指数は前年比4.8%、比較可能な昭和56年以降最大の伸び率を記録しました。

しかし、今般の物価上昇は、資源価格高騰と円安によるものであり、望ましいものとは言えません。何より賃金が上がらない中で、消費者の購買意欲は低く、企業は価格転嫁できず、ますます経営が厳しくなる現状に直面しています。消費者物価指数は上昇とはいえプラス0.6%で、企業物価指数に比べれば低く、日本は、今や先進国でも物価が安い国になっています。「原材料価格の高騰を適正に価格に転嫁できる環境整備を進める」としていますが、物価、特に原材料価格高騰対策と価格転嫁に向けた具体策をお聞かせ下さい。

構造的な経済の低迷に対処するため、国民民主党は、賃金上昇率が安定的に「物価上昇率+2%」になるまで、消費税率を10%から5%に引き下げることを提案しています。給料が上がらないからものが売れない、ものが売れないから企業収益が上がらない、だから給料を上げられない・・

景気低迷の悪循環を断ち切るために、消費税減税を行うべきと考えますが、総理のご決断をお願いします。

給料が上がる経済を実現するためには、産業や企業の発展も不可欠です。今や避けては通れないデジタル化やカーボンニュートラル化を進めるという方向性は示されているものの、具体策が見えません。国民民主党は、この分野の投資促進のためハイパー償却税制を提案していますが、いかがですか。

国民民主党は、「給料が上がる経済」の実現を目指し、消費税率引き下げや、投資や賃上げの促進税制、金融所得課税を含む所得税の総合課税化など、税制改正法案の提出を予定しています。中小企業者に大打撃となるインボイス制度の導入中止も盛り込んでいることを併せて申し添えます。

5.社会的共通資本の形成

続いて、コロナ禍を教訓にして、目指すべき社会像について、順次お伺いします。

コロナ禍により、人間の生命や暮らしを守る上で、利益の追求を図る資本主義の原理だけでは成り立たない分野があることを痛感させられました。

世界的な経済学者で、晩年は「TPPを考える国民会議」代表世話人を務めて頂いた東京大学名誉教授の故宇沢弘文先生は、社会活動全体を、「自由な経済活動に委ねる分野」と、「医療や教育、農業、自然環境など人間の暮らしを支える分野」に分け、後者を「社会的共通資本」と位置づけ、利益を追い求める対象にすべきではないと主張されました。まさに、教育や福祉などの社会的共通資本を充実させている北欧諸国は、先端技術が発達し、国際的な大企業も多く、幸福度も高いことは注目に値します。

日本も医療や教育、農業、自然環境などを「社会的共通資本」として制度的に位置付け、充実を図る方向を目指すべきと考えますが、総理の認識をお伺いします。

 コロナ禍により、食料についても、海外依存のリスクを痛感させられました。にもかかわらず、経済安全保障から農業が抜け落ちていることには非常に違和感を覚えます。「食料が自給できない国は真の独立国ではない」とかつてフランスのドゴール大統領が述べたとおり、食料自給こそ最大の安全保障ではないのか、総理の見解を伺います。

また、政府は依然として規模拡大を目指していますが、完全に世界の潮流に乗り遅れています。欧米では既に、経済活動、つまり農業生産への支援から、農地すなわち国土の保全への支援、更には農地に付随する気候変動対応や生物多様性保護といった公益性支援に移行しており、条件不利地域政策や中小規模農家への支援が充実しています。毎年のように豪雨などによる災害が多発する中、流域治水で果たす農地の貢献も大いに評価されるべきです。

いつまでも競争力強化の呪縛にとらわれることなく、欧米では当たり前の直接支払の充実を図るなど、まさに社会的共通資本として農業を位置付ける方向へと舵を切るべきではないか、見解をお聞かせ下さい。

6.人権

さて、企業・経済活動において欠かせないのは、環境への負荷軽減に加え、「人権への配慮」です。自社や取引先の企業において、人権侵害発生リスクの特定と対処が求められており、今や、人権への配慮なくしてビジネス自体が成り立ちません。

国連では、2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択され、イギリス、フランス、オーストラリア、オランダ、ドイツは既に法制化、他国も法制化の動きが加速しています。これに対して、日本においては「国別行動計画」がようやくを策定されたものの、国際的に見ても人権問題に対する取り組みが立ち後れています。

現在、超党派の議員連盟で、これらに対応する「人権デューデリジェンス法案」を準備していますが、本来、政府の責務として取り組むべきと考えますが、総理のご決意をお願いします。

人権問題は、対岸の火事ではありません。昨年7月、アメリカ国務省の「人身売買報告書」で、日本の外国人技能実習制度が人身売買に当たるとし、低賃金労働の問題に加え、母国の送り出し機関への多額の借金問題について政府が放置していることも併せて指摘されていますが、政府の対応状況について、お聞かせください。

また、外交演説では、表現は弱いものの、「ウイグル自治区の人権状況についても深刻に懸念」と表明しています。政府としてウイグルの人権状況をどのように把握し、何について懸念しているのか。そして、どのように対処するのか、総理の決意をお願いします。

 国民民主党は、先の衆院選の公約で、「積極財政への転換」と並んで、「給料が上がる経済」や「人づくりこそ国づくり」を掲げました。施政方針演説で総理が表明した「賃上げ」や「人への投資」は、国民民主党の公約を参考にして頂いたのかと思うぐらいであり、大きな方向性に異論はありませんが、具体策が弱いと感じています。その実現に向け、私たちは、現場の声に耳を傾け、その声をしっかり受け止め、これまで同様、様々な政策提案を行っていきます。総理におかれましては、「聞く力」をもって、柔軟に私たちの提案を受け入れて頂きますことをお願い申し上げ、私の代表質問とします。