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ニュースリリース

【参本会議】礒﨑哲史政調会長代理が「産業競争力強化法改正案」について質疑

 礒﨑哲史政調会長代理(参議院議員/全国比例)は26日、参議院本会議において、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」(産業競争力強化法改正案)について質問を行った。質問内容は以下の通り。

「産業競争力強化法改正案」に対する代表質問

令和3年5月26日
国民民主党・新緑風会 礒﨑哲史

 国民民主党・新緑風会の礒﨑哲史です。会派を代表して、ただいま議題となりました政府提出の「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」について、以下経済産業大臣に質問致します。

【産業競争力強化法が果たしてきた役割や効果】

 産業競争力強化法は、日本経済の3つの歪み、具体的には「過剰規制」、「過小投資」及び「過当競争」の3つを是正し、我が国の産業競争力を強化することを目的に、2013年に成立しました。

 2016年のダボス会議では第4次産業革命と言う言葉が使われ、産業における新たな時代の到来との認識が社会に共有され、グローバル競争はますます激しくなりました。同法施行後から7年を経過しましたが、我が国の産業競争力や国際競争力は果たして強化されたのでしょうか。

 例えば、国際経営開発研究所(IMD)による国際競争力年鑑の日本の総合順位は1989年の1位に始まり、1996年までは5位以内を維持、金融システム不安が表面化した1997年に17位に急落。その後、低迷と後退が続き、この法律が成立した2013年には24位であったものが、最新版の2020年では過去最低の34位まで落ち込んでおります。また、日本企業の半導体の世界売上高シェアが1998年の約50%から、2019年には10%まで低下していることも象徴的な動きであり、これらは、今後の我が国の産業競争力を考える上で、非常に懸念される点ではないでしょうか。

 この原因として、冒頭に挙げた3つの「過」の是正が十分に進まなかったことに加え、グローバルな企業活動において、近年では国際ルールに基づいた協調領域と、企業の強みを活かした競争領域を巧みに組み合わせた戦略が必要であり、その意味で国際標準化の取り組みも不十分であったと考えます。

 そこで経済産業大臣にお伺いします。産業競争力強化法は、我が国の産業競争力の強化、国際競争力の強化にどのような役割・効果を果たしてきたと評価しているのでしょうか。特に、3つの「過」、すなわち、「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」の是正について、産業競争力強化法はどのような役割をこれまで果たしてきたのでしょうか。また、IMDのランキングや半導体のシェアの落ち込みに対する評価についても、できるだけ具体的な答弁を求めます。

 さらに、産業競争力強化法の施行後7年間で得た教訓は、本法律案にどのように生かされているのかについても大臣に伺います。

【規制のサンドボックス制度の効果と恒久化の意義】

 次に、規制のサンドボックス制度の効果と恒久化の意義についてお伺いいたします。

 生産性向上特別措置法に基づく規制のサンドボックス制度は、企業による新たな挑戦を「実証」として試行することを国が認め、そこから得られたデータを用いて最終的には規制の見直しにつなげることを目的とした制度であり、2018年から3年間の期間を区切って革新的アイデアの迅速な実証と社会実装の実現を目指すべく運用されてきました。

 特別措置法制定時、政府は「次々と新しいアイデアを実証し、新しい政策形成に進めていきたい」との意欲を示していましたが、これまでの活用実績は20件の認定にとどまっております。

 政府としては、これまでの活用実績とそれによる具体的効果について、どのように評価しているのでしょうか、また、規制のサンドボックス制度は我が国発のイノベーションと停滞する我が国の生産性向上に向け、どのような効果をもたらしてきたと認識しているのでしょうか、大臣の見解を伺います。

 さらに、本法律案では、生産性向上特別特措法を廃止し、規制のサンドボックス制度を産業競争力強化法に移管し恒久的な措置とすることとしていますが、単に制度をスライドするだけでは、これまで以上の成果は期待できません。これまでの活用実績や課題、市場ニーズ等を踏まえた、具体的な制度の改善策について、制度を恒久化する意義と併せて大臣の答弁を求めます。

【大企業と中小企業との取引の適正化、特に型取引の適正化】

 次に、大企業と中小企業との取引の適正化、特に型取引の適正化の問題や下請Gメンについて、お伺いいたします。

 日本商工会議所等の中小企業団体や一部のエコノミストからは、「日本の生産性の問題は、中小企業の問題というよりは、我が国の下請けや中間搾取の構造問題であり、こうした問題にメスを入れない限り、中小企業が飛躍する機会が得られない」といった意見があり、そうした批判の声に耳を傾けてか、政府も、成長戦略実行計画の中で、「大企業と中小企業との取引の適正化」を掲げております。

 中小企業の生産性を高めるためには、大企業と中小企業の取引の適正化を図ることが不可欠だと考えますが、まずは、この点についての大臣の見解を伺います。

 私は自動車産業に長年身を置いてきたこともあり、「大企業と中小企業との取引の適正化」の問題、「型取引の適正化」の問題について注視してまいりました。

 政府においては、昨年10月から11月にかけて、製造業企業の3万社を対象とした「型取引に関する大規模調査および下請Gメン調査」を行っており、その結果が昨年12月に公表されております。

 それによれば、型代金の支払い状況について、発注側・受注側いずれの回答においても「引き渡し後の代金支払い」が50%以上を占める結果となり、「遅くとも型の引き渡しまでに型代金を支払うこと」という支払時期の課題については、引き続き取り組む必要が認められています。また、不要となった型の廃棄については、改善が見られるものの、廃棄について「事前の定めがなく、発注側から廃棄の指示もない」と回答した割合が発注側の4割弱に対し、受注側は6割がそのように回答しており、また、受注側の3割は「発注側の親事業者に廃棄の申請をしたが返事がない」としています。受発注間に、依然として型の廃棄可否に関する認識にずれがあることがうかがえ、廃棄基準の共有化が課題となっていること等が示されております。

 政府は型取引の適正化の問題について、具体的にどのような取り組みを進めてきたのでしょうか、特に、昨年12月の下請Gメン調査で明らかにされた課題について、改善に向けた動きは見られるのでしょうか、大臣の答弁を求めます。

 さらに、本法律案では、いわゆる下請Gメンが行う調査に法的位置付けを付与することとしておりますが、この改正はどのような効果を狙っているのでしょうか。また、下請Gメンについては、現在120名体制と承知しておりますが、下請問題の重要性に鑑みれば、今後、下請Gメンの人員を増員していくほか、調査能力の向上に努めていく必要があるのではないでしょうか、この点について大臣の見解をお伺いいたします。

【結び】

 時間の制約上省きましたが、多岐にわたる施策をカバーするこの法案について、他にも伺いたいことが沢山あります。また経済社会情勢が目まぐるしく変化していく中で、人権デューディリジェンスなど新たな課題も浮上してきており、こうした課題も産業の競争力に大きな影響を及ぼすと考えますが、大臣の見解を求めます。

 本法律案の趣旨説明において、旧態依然とした経済社会システムから本格的に脱却し、グローバルな構造変化へと一気に適応していくチャンスでもあると説明がありましたが、これまでの反省や教訓を踏まえつつ、それら多くの課題を謙虚に今後に生かすということでなければ、またもや我が国の産業競争力の強化は絵に描いた餅になりかねません。経済産業省にはそのような危機意識を持って、政策運営に当たっていただくことを求めます。そしてもう一つの重要な要素は「人」です。企業規模に関係なく、そこで働く人々のチャレンジする気持ちと努力の積み重ねの結果が、企業と産業の競争力であり、この後、様々な技術革新が急速に進展する中にあっても、「人」に焦点をあてた施策が何よりも大切であることを申し上げ、質問と致します。