ニュースリリース
【参本会議】大塚耕平議員が「関税暫定措置法」及び「外為法」について質疑
大塚耕平政調会長兼代表代行(参議院議員/愛知県)は15日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった「関税暫定措置法」及び「外為法」について質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
関税暫定措置法改正案及び外国為替及び外国貿易法改正案に関する
本会議質問
令和4年4月15日
国民民主党・新緑風会 大塚耕平
国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。ただ今議題になりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問します。
ロシアによるウクライナ侵攻は断じて許されません。制裁強化が必要ですが、はじめに他国との足並みを確認するために、米国、英国、EU等、主要国の最恵国待遇撤回措置の現状について総理に伺います。
次に、ロシアから輸入するエネルギー資源に対する基本税率及びWTO協定税率について伺います。両者に差がなければ、最恵国待遇を撤回しても制裁効果は得られません。事実関係と基本的認識を総理に伺います。エネルギー資源以外についても基本税率及びWTO協定税率の実情、及びどのような品目にどのような効果が出ると予想しているのか、総理に伺います。
外為法改正案について伺います。制裁対象者から第三者へ暗号資産を移転する取引等も規制対象とすること、及び、暗号資産交換業者に対し、制裁対象者に係る移転でないことを事前に確認する義務を賦課することは理解できますが、実際にそうした取引を行っているか否か、事前確認の義務を果たしているか否かを、当局は具体的にどのようにチェックするのか、その手法及び体制を財務大臣に伺います。
ロシアは制裁を受けつつも、引き続きエネルギー資源輸出によって多額の収入を得ています。石油輸出はウクライナ侵攻前より増加し、価格高騰で収入も増加しているとの情報も聞きます。制裁によってロシアが困窮して撤退や停戦を決断するという見方は楽観的です。以下、制裁に関連して何点か伺います。
第1に、エネルギー資源についてです。ロシアは世界2位の天然ガス産出国、3位の原油産出国であり、2020年の資源輸出総額は約3300億ドルです。2021年時点で約6000億ドルの外貨準備を有しています。
制裁で凍結されたドル資金は約1000億ドルと推定されますが、資源輸出が継続されれば、制裁による資金凍結効果は減殺されます。ロシアのウクライナ侵攻前のエネルギー資源輸出収入規模、そのうち制裁によって途絶した規模、及び現状について、総理の認識を伺います。
G7のうちロシア産原油の禁輸措置を打ち出したのは、輸入量が少ない米国、英国、カナダのみです。EUは石炭の段階的輸入禁止を打ち出しましたが、輸入額は年間約50億ドルに過ぎません。原油と天然ガスのロシア依存を見直す方針も表明しましたが、実行は2024年の話です。欧米諸国のロシアからのエネルギー資源輸入に関する制裁の事実関係と効果について、総理の認識を伺います。
第2は資金です。SWIFT排除に関してロシア最大手ズベルバンクと、国策企業ガスプロムバンクは制裁対象に入っていません。日米欧諸国における両銀行に対する措置について、事実関係と各国対応の背景について総理の認識を伺います。国債デフォルトも起きていません。各国中央銀行がロシア政府の外貨準備を凍結したため、ロシアは米ドルを引き出せないはずですが、現実にはドルによる利払いが行われています。各国が自国の債権者への影響回避のために例外を認めているのか、ロシアが別ルートで調達しているのか定かではありません。どのようにデフォルト回避をしているのか、政府の分析と総理の認識を伺います。また制裁対象は政府の外貨準備だけであり、民間金融機関保有の外貨は凍結されていません。これがロシア政府に回っている可能性もあります。ロシア民間金融機関保有の外貨について、日本国内及び国外の状況について、財務大臣に伺います。
第3は食料です。ロシアとウクライナは小麦の世界輸出量の3割を占めます。ウクライナ危機の影響で今年の小麦輸出量は約360万トン減少すると見込まれています。両国の小麦に依存している人口は約8億人と推定されます。今後の食糧不足に対する政府の認識と、需給逼迫、価格高騰に対する日本の小麦対策について総理に伺います。
第4は米ドルについてです。ロシアは制裁への対抗措置として、資源輸入国に対して代金をルーブルで支払うことを求めています。米国債は中国等の海外投資家が約7.1兆ドル(約880兆円)保有しています。これはドルの強さである一方、売却されれば弱点にもなります。
ロシアと中国はルーブルや人民元の外貨準備や市場におけるシェアを高め、ドルの基軸通貨としての価値低下につながる戦略をとっていると思います。総理の認識を伺います。
第5は武器です。ウクライナ危機に伴って各国の国防費増大傾向が顕著です。ドイツはGDP2%超を国防費に充てると宣言し、米国も2023会計年度で過去最大5.8兆ドルの国防費を計上すると表明しました。武器産業の重要性も高まります。15世紀イタリアの政治家マキアベリは次のような言葉を残しています。「戦争は始めたい時に始められるが、止めたい時に止められない」。プーチン大統領に伝えたい言葉ですが、「始めさせない抑止力」と「始められた時の相手に対する打撃力」が国家の安全保障の要諦です。防衛費や武器産業の世界的潮流にどのような方針で臨むのか、総理の考えを伺います。
米国では第2次制裁、すなわちロシアと協力関係を維持する第三国にも制裁を科すことが検討されています。1974年、ニクソン大統領はキューバと貿易を継続していたバングラデシュへの食料支援を中止しました。2011年、オバマ大統領はイランから石油を購入していた日欧諸国に制裁措置を打ち出した結果、イランの財政は行き詰まり、核開発凍結に向けた交渉に応じました。米国にはこうした成功体験がありますが、今回は事情が異なります。第2次制裁の想定対象は中国やインドです。ロシアのラブロフ外相は今月1日、突然インド外相と会談しました。第2次制裁を念頭に、対露制裁に同調しないことを求めたと推測されます。米国による第2次制裁の可能性について、現時点での総理の認識を伺います。
日本の場合、水産資源についても留意が必要です。2021年の日本のロシアからの水産物輸入額は1381億円であり、中国、チリに次ぐ第3位です。日露間では、北方領土沖合や、相互の200カイリ水域における魚種別漁獲量等の協議が行われ、安全操業と漁業継続を担保しています。昨年は3月29日から4月2日まで交渉が行われましたが、今年はウクライナ危機の影響でサケ・マス漁開始日の4月10日に間に合わず、11日にようやく始まりました。日露漁業交渉の現状と見通しについて農水大臣に伺います。また、今回の最恵国待遇撤回で水産物の税率と輸入にどのような影響が出るか総理に伺います。
政府はロシア産水産物の輸入禁止は行わないとしていますが、米国は輸入禁止を決めました。水産物はロシアの外貨獲得手段です。政府の方針、及び米国の第2次制裁の対象となる可能性について、総理の認識を伺います。
ロシア高官は経済制裁に加わった日本を非友好国とし、報復措置を講じると発言しています。制裁の反射効果や対抗措置への対策について、総理の認識を伺います。
ウクライナ危機は日米欧と中露両国との対立構図を浮き彫りにしました。従来のグローバル化の前提は成り立ちません。食料やエネルギー資源の確保戦略、自給率向上戦略に真剣に取り組むことが急務です。この点に関する総理の考えを伺うとともに、ウクライナ国民に連帯の意を表して質問を終わります。