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ニュースリリース

【参本会議】大塚議員が「日英EPA」について質疑

国民民主党の大塚耕平代表代行(参議院議員/愛知県)は27日、国民民主党・新緑風会を代表して「日英EPA」について参議院本会議での質疑に立ちました。質疑の全文は以下の通り。

日英EPAに対する質問

2020年11月27日
国民民主党・新緑風会 大塚耕平

国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。会派を代表して、ただ今議題となりました日英EPAについて質問します。

まず、短期集中的な交渉に注力した関係者に敬意を表します。二国間交渉の合意は、双方が互いに利を得たと評価する言わば「Win-Win」の結果です。そこで外務大臣に伺います。日英それぞれが利を得たと考えている点、及び、それぞれが譲歩した点について、ご説明ください。

昨年9月20日、英国政府は日英EPAに関する「意見募集のための情報文書」を公開しました。交渉内容について国民から意見を求めたものであり、多数の意見が寄せられたそうです。それらを踏まえ、今年5月13日、英国政府は「戦略的アプローチ」と題する約100頁に及ぶ文書を公開し、交渉に臨む基本方針と内容を国民に説明しました。対する日本政府による同様の対応はなく、大筋合意が発表された9月11日に2頁の資料が公表されただけです。国民や国会に対する情報開示や透明性の観点から、その対応が適切であったか否か、外務大臣の認識を伺います。また今後、同種の交渉において、国民や国会に対する情報開示のあり方を改善する意思があるか否か、伺います。

英国政府は日英EPAによる影響試算も公開しました。GDP+0.07%、対日輸出+21.32%、日本からの輸入+79.67%、賃金上昇+0.09%などです。日本は事前に試算を行ったか否か、行っていたとすれば公表したか否か、外務大臣に伺います。

英国政府の公開文書から、ブルーチーズ、豚肉、地理的表示(GI)、皮革、繊維、デジタル、会計・法律等のビジネスサービス、金融サービス、中小企業政策が英国側の重点分野であったことが読み取れます。これらの分野に関して、何を要求され、何を合意したのか、経産大臣、農水大臣、金融担当大臣に伺います。 一方日本側は、経産大臣が6月9日の記者会見において、自動車、デジタル、農産物が重点分野である旨、発言しました。3分野について、交渉に臨んだ方針と結果について、経産大臣、農水大臣から説明願います。

また英国政府は「ビジネス目的での人の移動」に関し、ビザ取得や配偶者・扶養家族の滞在期限等の要件、及び「知的財産権の保護」に関して、映画や音楽等のオンライン侵害規定について、日EUEPAを上回る柔軟性を確保したと説明しています。具体的にどういうことか、外務大臣、経産大臣に説明を求めます。英国の事前公開文書には、日英EPAはTPP 参加へのステップという認識が明記され、トラス担当大臣も同趣旨の発言を繰り返しています。そこで、英国のTPP参加に関する日本政府としての受止め方を外務大臣に伺います。英国は日本を含むTPP加盟国と既に協議を行っているとも聞きますが、事実関係を伺います。

今月15日にRCEPが合意に至りました。中国の習近平国家主席はAPEC首脳会議で「TPP加入を検討する」と述べました。中国の意図は容易に想像がつきます。しかし、日米同盟を基軸とする日本が、米国抜きのTPPへの中国参加を是認することは様々な問題を惹起します。そこで外務大臣に伺います。12日の菅総理とバイデン次期米大統領の電話会談において、TPPへの早期参加を促したのでしょうか。また今後、米国に早急な参加を促す努力をするのか否か、伺います。合わせて、来日した王毅外相とTPP参加に関する協議があったか否か、及び中国との今後の貿易交渉に臨む基本認識も説明願います。

中国のTPP参加に関しては、英米との順番、及び参加の段階でTPPの内容がどうなっているかが重要な鍵となります。そこで外務大臣に伺います。日英EPAとTPPを比較すると、どの分野がどのように異なるのかご説明ください。とくにデジタル分野に関して、日英EPAとTPPの違いを説明してください。TPP参加に関しては、英米両国が中国に先んじること、及び英国が加入する段階でTPPを日英EPAと同等以上の内容に見直すことが必要と考えますが、外務大臣の認識を伺います。

中国の動きを考える場合、RCEPと日英EPA、TPPとの内容の違いも重要です。そこで伺います。RCEPは日英EPAやTPPに比べて貿易自由度において、どの分野でどのように劣後しているのでしょうか。外務大臣に具体的に説明願います。19日の外交防衛委員会でRCEP第10章6条に技術移転等の強要禁止が盛り込まれたことを外務大臣に伺いましたが、その点も含め、RCEPと日英EPAの違いについて説明してください。

デジタル貿易分野はWTOにルールがなく、TPPや日EUEPA、USMCA、日米デジタル貿易協定が先行しています。TPPを超える形で妥結したのがUSMCA及び日米デジタル貿易協定です。そこで外務大臣に伺います。日英EPAをUSMCA及び日米デジタル貿易協定と比較すると、デジタル分野に関して、どこが同じで、どこが違うのか、説明願います。

そのうえで、日英EPA第8章に関して伺います。

71条の用語定義において、コンピュータ関連設備としてサーバー及び記憶装置を限定列挙しています。技術進歩やインフラの実態を鑑みると、サーバー及び記憶装置「等」として幅広く規定するのが適切と考えますが、なぜ限定列挙したのか、経産大臣に理由を伺います。

73条では、ソフトウェア関係の貿易の条件として、当該ソフトウェアのソースコード、及びそのアルゴリズムの移転、アクセスを要求してはならないとしています。しかし、73条の規定は、相手国の規制機関や司法当局の要求は認めており、しかも執行活動のみならず「調査」「検査」名目も可としています。さらに同条1項aで、自由に交渉された契約や政府調達においては、移転、アクセスを自主的に付与することを認め、しかも1項bで政府権限としての活動を除外しています。日英EPAのこのような規定がTPPに反映され、これをもって強権的国家の参加の前提とする場合、潜在的な問題が多いと考えます。

84条の情報の越境移転、85条のコンピュータ関連設備設置、86条の暗号装置規定でも同様の懸念があります。

これら条文の解釈を経産大臣に、及びこの規定がTPPに反映されることを前提とした強権的国家の参加の懸念等について、政府の認識を外務大臣に伺います。ちなみに、71条の用語定義、及び73条の該当条文においても、ソースコードの定義が定められていません。ソースコードについて日英間の合意した定義を経産大臣に伺います。

同様の問題意識で金融サービスについても伺います。63条3項で、金融当局が金融サービスのコンピュータ関連設備を利用し、設置することを要求する権利を認めていますが、4項では「効果的な金融上の規制及び監督のために適当な限度を超えた態様」で要求してはならないと定めています。「適当な限度」とはどのようなことか、金融担当大臣に日英間での合意内容を伺います。

ISDS条項について伺います。ISDS が導入された1987年から2019 年までの提訴件数は 1023 件に上り、国別では米国183 件が1位、英国は86 件で3位です。国側が多額の負担を負うケースが多いISDSによる紛争処理には、透明性及びコストの観点から否定的な国が増えています。EUはISDSに代わる国際投資裁判所(ICS)を提案しているほか、米国も今やISDSには否定的であり、USMCAのISDSは実質的に無効化されました。一方、日本は引き続きISDSに前向きであり、英国も肯定的と聞いています。しかし、日英EPAにもISDSは盛り込まれませんでした。ISDSに対する基本認識、及び日英EPAに盛り込まなかった理由について、外務大臣に伺います。

WTO の行き詰まりに象徴されるように、世界の貿易体制は矛盾と限界に直面しています。技術革新の加速やコロナ禍の影響で世界のサプライチェーンは不確実性を増し、貿易投資協定の内容は今まで以上に重要性を増しています。これまでの延長線上の内容では対応できない事態も想定され、条文の分析や交渉戦略のあり方には、専門家の知見を最大限に活用する必要があります。過度の秘密主義を是正し、的確な情報公開を行い、多くの専門家の知見を活かし、国益及び国際的利益に資する交渉を行うことを求め、質問を終わります。ご静聴、ありがとうございました。

以  上