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ニュースリリース

【参本会議】舟山参院会長が高市総理の所信表明演説に対する代表質問で登壇

1.はじめに

国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
会派を代表して、高市総理の所信表明演説に対して全て総理に質問します。
代表質問にあたり、委員長の職にある中、本会議登壇にご理解頂きましたこと、各会派の皆様に感謝申し上げます。所掌であるこども・子育て・若者政策以外の案件について質問させて頂きます。
 まずは、高市総理、ご就任おめでとうございます。ことさら女性だから、という言われ方は私自身好みませんが、それでも歴史的な初の女性総理誕生は、率直に嬉しく思います。
 総理は所信表明冒頭の決意で、「政治への信頼を回復するための改革にも全力で取り組んで参ります」と力強く宣言されました。現在は政治への信頼が揺らぎ、失墜しているとの基本認識こその発言だと拝察いたしますが、総理は何が問題で、どう改善するべきとお考えか、お聞かせください。

2.政治への信頼回復に向けた具体策

 私は、やはり、「政治への信頼回復」には、「政治と金の問題」の解決が最重要だと考えます。信頼失墜の最たる要因は、一昨年末に問題化した、いわゆる「裏金問題」にあることは論を俟ちません。総理は、裏金に関わった議員も政務三役等に起用しています。とりわけ、選挙を経ないまま起用された参院側の官房副長官に対しては、参院自民党からさえ疑問の声が噴出し、機能不全に陥っています。総理はこの問題は解決済みと判断したのでしょうか?それとも、参議院を軽く見ているんでしょうか。
 裏金問題を契機に、政治資金透明化に向けた議論が加速しました。その1 つが「企業団体献金」のあり方です。
 廃止論もありますが、私たちは、「非公開かつ非課税」のお金こそが問題との立場から、献金元が企業団体であるか否かに関わらず、寄附の流れと使途を監視することで、お金で政治や政策がゆがめられない仕組みこそが重要であるとの観点から、昨年末、「政治資金監視委員会設置法案」を提出しています。
 加えて、今国会では、企業団体献金の受け皿を、政党本部と都道府県連に限定し、上限規制も厳格化する「政治資金規正法改正案」を、公明党と共同提出する方針です。それこそが政治への信頼回復、さらには政治の安定につながると考えますが、いかがですか?連立を組む日本維新の会も企業団体献金には厳しい立場ですので、一歩踏み込んだ総理のご決断をお願いします。

3.政権の基本方針は何か

 総理は、「各党からの政策提案をお受けし、柔軟に真摯に議論して参ります」との決意も力強く述べられました。
 「少数与党政権」となった石破前政権も、「熟議の国会」「野党の声も丁寧に聞き」「可能な限り幅広い合意形成が図られるよう」「真摯に、そして謙虚に」取り組む旨を何度も繰り返し表明したものの、現実は、決断、実行に至らなかった政策ばかりで、国民の失望が拡がりました。昨年末の三党合意はその象徴です。
 「政治の安定」の1 つの手段として、「自由民主党と日本維新の会による連立政権を樹立」したとのことですが、夏の参院選を経て、両党合わせても、衆議院のみならず参議院でも少数与党である事実を重く受け止め、高市総理には、真に私たち野党の声、提案に耳を傾け、議論するだけでなく、「決断と実行」に踏み切って頂くことを強く期待しますが、いかがですか。力強い決意の答弁を求めます。
 「政権の基本方針と矛盾しない限り」との但し書きが文字通り運用されれば、「政権の基本方針」を楯に、野党からの建設的な提案や議論が一方的に撥ね付けられることにもなりかねません。そこで確認です。政府や与野党の議論の大前提となるこの「基本方針」とは何ですか?10 月20 日に交わされた「連立政権合意書」ですか?

 さて、日本は、「失われた30 年」を乗り越え、再び将来に向けて豊かな経済を実現し、成長できるか否か、大きな分岐点にあります。こうした中で、私たち国民民主党は、5 年前の9 月に結党し、翌年の衆院選公約から「積極財政」を掲げ、「給料が上がる経済」「手取りを増やす!」政策を提案し続けています。この夏の参院選の公約集でも「手取りを増やして消費を拡大し、売上を増やすことで更なる賃上げにつなげる、好循環を作っていきます」と冒頭に宣言しました。
 その「積極財政」を、総裁選で強く主張され、今般の所信でも「経済財政政策の基本方針」の柱として掲げられていること、心から歓迎し、期待申し上げます。ただし、一抹の不安が残るのは、高市総理が「責任ある」という枕言葉をことさらに強調するようになったことです。いかなる施策も財政等様々な制約を考慮する必要があるのは当然です。「責任ある」と書き足したことで、いわゆる「緊縮財政派」に押されて、必要以上に妥協を許すことにならないかを懸念します。
 そこでお伺いしますが、高市総理が掲げる「責任ある積極財政」とは何か、単なる「積極財政」とは何が違うのか、明確にお答えください。

4.物価高対策

 ガソリン暫定税率廃止については、与党の代表者が最終盤まで財源論を振りかざし、「年内廃止」が危ぶまれていましたが、ようやく合意にこぎ着けることができました。まさに、総理がおっしゃる、好循環による税収増加を実現するためにも、ご英断に敬意を表します。
 さて、もう一つの三党合意である、「いわゆる103 万円の壁」について、所信では「今年の年末調整では160 万円まで対応」と述べられていますが、実際は所得階層ごとに複雑に分かれ、160 万円まで控除されるのは年収200 万円以下、納税者の5%のみです。
 「最低限度の生活を維持するために必要な部分を除いた残余に対して課税されるべき」との、国税庁HPに掲載の税務大学校の論文での見解から導かれる考え方にも、国民全体が等しく基礎控除を受けるべきとの憲法25 条の要請にも反します。
 改めて、基礎控除の引き上げにあたっては、これまで我が党が主張している通り、「健康で文化的な最低限度の生活を営める賃金」として定められている最低賃金の上昇率に合わせるべきで、改めて、一律178万円への引上げを提案します。減税はすなわち国民の所得増となるため、消費拡大による税収増も勘案すべきであり、経済の好循環実現のためにも、ぜひ総理のリーダーシップで決断をお願いいたします。
 担税力に応じた公平な税制の実現という意味では、103 万円の壁だけでなく、いわゆる1億円の壁の見直しも重要です。岸田政権下で決定された課税強化策は、所得30 億円超のわずか300 人が対象という中途半端なものでしたが、今後1 億円の壁の是正を具体的にどのように進めていくのかをお聞かせください。

5.日米首脳会談等について

 就任早々、日ASEAN首脳会議、日米首脳会談、APEC 首脳会議等と、外交日程が続き、特に、トランプ大統領とは、同盟関係の重要性を確認したほか、安全保障や経済での具体的な約束など、日米関係の深化、再構築の重要な機会となったことは一定の評価に値します。
 しかし、関税や投資をめぐる7 月の合意や9 月の共同声明、了解覚書の実施を謳う今回の文書の副題にしか過ぎない「日米同盟の新たな黄金時代」という言葉が、経済のみならず、日米関係全般の新たな未来像のように扱われていることには違和感を禁じ得ません。だからこそ、トランプ大統領に言うべきことはしっかり言って頂きたい。そういった立場から、いくつか質問してまいります。
 まずお伺いしたいのは、高市新政権の発足直後で、日米両国民だけでなく、アジアそして世界の各国が今後の日米関係に注目を寄せている時期にもかかわらず、共同声明の作成や、共同記者会見の実施が見送られたことです。そのように判断した理由を高市総理に伺います。
 日ASEAN首脳会議の共同声明では、真っ先に「国際レベルでの法の支配を堅持」と明記し、重要性をしっかりと確認し合った「法の支配」という言葉が日米首脳会談では見当たりません。なぜですか?現代の国際社会で各国が最も尊重すべき普遍的価値として、改めて首脳同士で確認し合うべき法の支配に関して、トランプ大統領とどのように確認しあったのか、お聞かせください。
 9 月には関税措置をめぐる交渉の結果、日本からアメリカへの80 兆円規模の投資を柱とする了解覚書を日米間で交わしました。投資先は米国大統領が決める、利益の90%をアメリカが取る、というまさにアメリカ・ファーストを体現するかのような内容となっています。「行政上の了解であり、法的拘束力のある権利・義務を生じさせるものではない」と書いてはあるものの、従わなければ追加関税も辞さないというトランプ大統領の強い意思が見え隠れする内容で、総理も総裁選時は懸念を表明されていましたが、今回それを追認したのでしょうか?
 総理は、所信で「自由で開かれたインド太平洋」を謳い、閣僚への指示書では「ルールに基づく多角的貿易体制の強化」等を打ち出しています。日米同盟の重要性は理解しますが、米国との合意は、自由貿易体制下での国際ルールと必ずしも相容れないのではないでしょうか。改めて「国際ルール」が大前提ということの確認を求めます。
 投資増と引き換えに関税引き下げを勝ち取ったとはいうものの、本来の関税は引き上げられ、大きな影響を受けている側面も見逃せません。この負の影響を差し引いてもなお「新たな黄金時代」と評価するに値する、我が国が具体的に獲得した内容をお示しください。レアアースの供給確保のための枠組みを確認したことは大きな評価に値します。総理は経済安全保障の一環として、「国産資源開発」の重要性を経済安全保障担当大臣等に指示していますが、世界有数の埋蔵量とされ、記者会見の中でも、共同開発の可能性に言及した南鳥島周辺海域でのレアアースについて、今後具体的にどのように共同開発を進めていくのか、お聞かせください。
 総理はノーベル平和賞に推薦したいとトランプ大統領に伝えたそうですが、ぜひ、強く進言して頂きたいことがあります。トランプ大統領がちらつかせている、ICC、国際刑事裁判所への制裁に関する件です。
 ICCは、戦争犯罪や人道に対する犯罪などを行った個人を処罰できる常設の国際的な刑事法廷であり、「法の支配」の下で正しく裁判をすることによって平和構築に寄与しています。我が国は、締約国中最大の資金拠出国であり、現所長の赤根智子さんほか、加盟以来、一貫して裁判官を送り出すなどその活動を強く支援してきました。
 そのような中、今年2月に、トランプ大統領は、ICC職員への制裁を可能にする大統領令に署名、一部の職員が既に制裁を受け、業務に支障が生じています。9月には、ICC本体への制裁も検討中との報道もありました。ぜひ日本はICCを守る、と世界に向けて発信すると同時に、強い同盟関係があるからこそ、制裁を思いとどまるよう、高市総理から大統領へ進言することを約束してください。

 日中首脳会談においては、総理と習近平主席との間で、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築するという日中関係の大きな方向性を改めて確認された上で、総理からは、中国での邦人襲撃事件や邦人拘束に対して、安全確保や拘束中の邦人の早期釈放を求めたほか、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の人権問題への深刻な懸念もお伝え頂きました。
 そこで総理にお願いと提案です。
 2021 年9 月、世界中で法の支配が脅かされ、人権問題が深刻化する中、岸田政権下で「国際人権問題担当補佐官」が創設されました。初代補佐官は、中谷元前防衛大臣であり、国連や各国の人権担当官と精力的に会談を重ね、政治主導でこの分野の課題解決をリードされていましたが、わずか2 年でこのポストが消滅してしまいました。
 今や世界を取り巻く状況は、ようやく停戦合意を迎えたものの依然予断を許さないガザの状況など、紛争の度ごとに人権・人道被害は深刻化しています。
 今こそ、自由や民主主義と並んで普遍的な価値である、「人権」重視の世界秩序構築に向けて、我が国の役割は重要と考えます。そのためにも、再度、人権問題担当補佐官を設置すべきです。いかがですか。

 今年は戦後80 年の節目の年、残された戦後補償問題、空襲被害者への救済についてお聞きします。
 総理は、総裁選時に「全国空襲連」からの公開質問状に対し、「大変重要なテーマ」「被害者のご年齢を考えると対策が急がれる問題」「貴連絡協議会の皆様とともに、超党派の空襲議連の先生方ともしっかり協議させて頂きたい」と回答されました。被害者の皆様の期待も膨らんでいます。
 総理、まさに時間がありません。石破前総理は、3 月の予算委員会で「行政が何ができるかということはよく考えて対応してまいりたい」「戦後80年という節目の今年こそ、空襲被害者の救済に乗り出して、この問題に決着を付けるべきだ」と表明されましたが、残念ながらまだ動いていません。いよいよ高市総理の出番です。救済実現に向け、ご決断をお願いします。

6.総合安全保障

 続いて、防衛力にとどまらない総合的な安全保障についてお聞きします。
 所信でも、経済、食料、エネルギー、健康医療、などの項目を立てており、総理もその重要性を強く認識されていると考えています。
 2022 年5 月に成立した「経済安全保障推進法」は、特定重要物資の指定等の措置を規定していますが、その対象範囲は極めて限定的で、国民民主党は当時から食料や医療など、「国民と国土を危機から守るための総合的な安全保障」の必要性を訴え、対案も提出してきました。
 具体的な「特定重要物資」の指定は、総理が「経済安全保障担当大臣」時代に行われましたが、食料安全保障に関して言えば、肥料のみで、重要物資であり戦略物資である食料は外されました。なぜ「特定重要物資」にしなかったのか、改めて、総合的な安全保障の確立のためにも食料を加えるほか、所要の見直しを行うべきと考えますが、総理、いかがですか。

7.食料安全保障

 総理は総裁選中に、食料安全保障の重要性を力強く訴え、カロリーベースの食料自給率100%を超える欧米を引き合いに出し、「限りなく近づけていく」と高らかに宣言されていました。大変心強く感じています。
 しかし、所信では自給率への言及はなく、閣僚指示書では、「新しい食料・農業・農村基本計画」の目標達成、つまり2030 年のカロリーベース食料自給率45%を御指示されています。
 当然、45%を通過点に、その後のさらなる高みも視野に入れた指示だと思いますが、傍目には目標が後退してしまったように映ります。
 そこで総理に伺います。今後、100%に近い水準の食料自給率を、目指しますか。目指すのであれば、いつまでに、どのように目指しますか。
 米は、品目別自給率100%超が可能な大切な基幹作物であり、主食です。アジアモンスーンの気候にも適し、気候変動激化の中で最も安定生産が見込めるのも水田農業です。自給率向上のためには、日本の食料安全保障の基盤である米の生産拡大、米農家の安定的な手取り増加は急務です。
 そして、米をめぐる昨今の混乱から得られた教訓は、「二度と米不足を起こさないこと」であり、そのためには増産は必須です。一方で需要がなければ価格が暴落、農家経営にも打撃を与え、結果的に生産減少を招き、供給不足になるという悪循環にもつながりかねません。だからこそ、受け身にも見える「需要に応じた生産」ではなく、需要喚起対策にこそ重点的に予算をつけ、積極的な「需要喚起を伴う増産」を謳うべきだと思いますが、今後の米生産方針についてどのようにお考えなのでしょうか。
 EUでは、共通農業政策として、「経済的に成り立つ農業収入の確保支援」=「インカム・サポート」を導入し、農業経営を支えています。実は、直接支払の受益は、生産者と消費者双方に分配されると分析されており、農産物価格の引き下げ効果も確認されています。まさに、我が党がかねてから提案している「食料安全保障基礎支払」の出番です。「全ての田畑をフル活用できるその環境、必ずつくります」との総裁選での力強い決意を実行する意味でも、全ての田畑を荒らさず耕作する、それを応援することで農家の手取りを増やし、農業の持続可能性を後押しすると同時に、適正価格を実現し、物価高に苦しむ国民生活を助ける。このことこそが、総理の目指す100%に近い自給率達成の必須条件だと考えます。導入に向けた早急な議論を求めたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 これはまさに、総理のおっしゃる「危機管理投資」そのものであり、農業にこそ、積極財政が必要です。安全保障のための備蓄制度の拡充の必要性も含め、総理の御所見を伺います

8.森林再生・離島保全

 さて近年、全国各地で野生鳥獣、特にクマの市街地への出没が増加、今年は特に人身被害が過去最多を記録するなど深刻化しています。これまでは市街地での銃器使用には警察の許可が必要でしたが、鳥獣保護法改正による「緊急銃猟制度」導入により、自治体の判断でより迅速な駆除が可能となり、9月の法施行後すでに複数の緊急銃猟が行われています。しかし、課題も山積しています。
 このような中、国民民主党は、10 月30 日、「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」開催に先立って、閣僚会議議長の木原官房長官に対し、クマ被害の抑制と、国民の安心・安全確保に向けた緊急要望を行いました。
 緊急銃猟制度のノウハウ・マニュアル等の自治体への共有・提供とともに、実施時の市町村の責任や、警察との連携のあり方及び警察の役割、自衛隊による後方支援の必要性を提起するとともに、ハンター等の報酬や責任、補償等の明確化による人材育成と、それらに向けた財政支援の拡充等を提案しましたが、改めて、クマによる被害防止の課題に対して、今後どのような対策を講じようとしているのか、総理の現状認識と見解をお伺いします。
 加えて、根本対策も必要です。市街地へのクマの出没の原因は、猛暑や台風の頻発化によるエサとなる木の実の不作、生息域の拡大、冬眠時期のずれや無冬眠個体の出現など、気候変動による自然的影響が指摘される一方、かつて人間が手入れをしていた緩衝地帯たる「里山」が、過疎化や高齢化、燃料転換などで放置され、山と人里の境界線が曖昧になっていることも大きいと考えます。総理はこうした現状に対して、どのような対策を講じるべきとお考えですか?
 農林漁業や農山漁村の振興は、単に「儲かるか否か」という産業としての側面からだけでなく、例えば市街地の暮らしを様々なリスクから守ることや、地域社会そのものの維持など、多面的価値を評価し支援する観点が必要です。所信では、これらの視点が抜け落ちていましたが、地方創生や安全保障との関連で、講じるべき施策の方向性について、見解をお聞かせください。
 これに関連して、林地などにおけるメガソーラーは、景観悪化に加えて、山林崩壊や保水力低下を招いている側面があります。「脱炭素」を謳いながら逆に環境や生態系の破壊につながっている負の側面に対して、総理はどのような見解をお持ちか、今後の対応方向も含めてお答えください。
 もう一点、国境離島についてお伺いします。総理は、自民党政調会長だった2022 年3 月に、沖縄県・尖閣諸島について「実効的に日本の領土だと示せるよう、さまざまな工作物の設置、施政権が及んでいると明確に示せる形をつくっていくことが非常に大事だ」と述べられました。この思いは変わっていませんか?
 魚釣島では、1978 年に人為的に持ち込まれた山羊の大繁殖による食害が深刻化しています。昨年4月に石垣市と共同で海洋環境調査に入った、当時、東海大学教授で、現在我が党所属の山田吉彦議員からは、「食害で木の根や草が減り、生態系を維持できない島になり始めている。」との深刻な状況報告と早急な対応の提言を受けています。総理、この状況に対して、何らかの対処を頂けないでしょうか。

9.人づくりこそ国づくり・・・教育

続いて、教育についてお伺いします。
 所信表明後の10 月29 日に、自民党、公明党、日本維新の会の3党で、来年度からの高校無償化の制度設計で合意したと伺いました。私立学校への支援金の上限額の引き上げや、教材費など授業料以外を支援する「高校生等奨学給付金」の拡充が内容で、所要額は約6,000億円、財源は、既存の教育予算を原資としない方向と聞いていますが、財源の目処はあるのでしょうか。暫定税率廃止をめぐっては、財源を理由に議論が停滞していたことを考えると、財源あってこその政策推進だと思いますが、いかがですか。
 そこで提案です。私たち国民民主党が結党以来掲げる、「教育国債」の発行を検討すべきではないでしょうか。「人づくりこそ、国づくり」、まさに教育や人づくりは未来への投資であり、未来からお金を前借りして投資し、将来、大きく育った人材から投資分を回収する、こういった趣旨です。
 教育無償化については、人づくりこそ国づくりの一環としてその必要性を訴えてきましたので、大きな方向性は賛同いたします。その上で、いくつか確認させて頂きます。
 高校無償化は、相対的に私学支援が厚くなることで、公立高校が不利になるとの懸念の声を多く聞きます。実際、例えば山形県では、令和2年から公立高校の定員充足率が大きく低下する一方、私学への助成拡大に比例するかのように私立高校の充足率が逆転、大きく上がっています。私立は、スクールバスを多方面に展開し、県境も越えて生徒を集めるなど、人気が高まる一方で、公立は、少子化の中で積極的な投資がなされず、校舎等も古いままボロボロで、人気低下に歯止めが掛かっていません。今年地元の県立高校を卒業した娘も「私立はいいなあ、校舎がきれいで」とうらやましがっていました。
 また、無償化の恩恵が、私学が林立する大都市圏に集中し、過疎地域等からの生徒の流出を加速させる弊害も指摘されています。
 総理は、「日本の高校教育の在り方についても見直しを進めます」と表明されておりますが、ぜひ、これらの懸念点を含めて、地方創生の拠点でもある、地域唯一の公立高校や専門高校を消滅させないよう、私立との競争という観点ではなく、得意分野の住み分けや、交通アクセス確保を含めた魅力向上に向けた抜本的支援策をセットで講じて頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。

10.観光立国、交通網の整備

 脱炭素を進める上でも、観光振興の意味でも、重要な役割を担うのが、地方も含めた鉄道ネットワークです。
 高市総理は、インバウンド観光の重要性を訴え、国交大臣にはオーバーツーリズム対策の推進を指示していますが、地方分散を進める上で重要な鍵となるのが、外国人観光客にとって安全性・利便性が高い足である「鉄道ネットワークの維持・強化」です。海外では、一早く鉄道の有効性を再認識し、ネットワークの拡大を進めています。高齢化による交通弱者の増加も相まって、我が国でも公共交通としての鉄道の役割は大きいと考えますが、総理の基本認識をお聞かせください。
 ところが今、ただでさえ地方の鉄道は恒常的な赤字に苦しむ中、度重なる自然災害による鉄路の被害が追い打ちを掛けています。
 通常、自然災害という不可抗力による被災時には、様々な支援措置があります。とりわけ、公共性の高い施設の復旧には、国が責任を持って支援する、という考え方に立って、通常よりも高い補助率が適用されています。
 ところが鉄道は、「公共交通」と呼ばれ、公共性が高い施設にもかかわらず、災害時でも高率の補助が受けられません。なぜか?民間事業者だから、というのがお決まりの答えですが、鉄道の復旧も、公共土木施設等と同様の支援を行うべきではないでしょうか?現行制度では、地方の赤字ローカル線は、被災の度ごとに確実に消えてしまいます。「災害復旧は最優先」を具体化する制度に見直すよう、高市総理のご決断をお願いします。
 加えて、そもそも公共交通は採算だけで論じるべきではありません。
昨年の代表質問でも問題提起したように、「公共交通は公共がしっかり責任を持ってサービスを提供していくもの」であり、「目指すものは収益の最大化ではなく・・社会全体の利益の最大化」です。現在のような、国による「民間や地域の取組への『支援』」ではなく、国が主体的に役割を果たす方向に公共交通施策を大転換するべきではないですか?
 交付金を除く令和7年度当初予算ベースで、道路整備予算の68分の1程度にとどまっている、鉄道を含む公共交通に関する予算を大胆に増額する必要性と併せてお答え願います。

11.むすびに

 私たち国民民主党は、現在、補正予算編成に向けた、国民の懐をさらに豊かにするための経済対策を作成中であり、近日中に提案させて頂く予定です。総理におかれては、こうした私たちの政策提案にも真摯に耳を傾けて頂き、「対決より解決」の姿勢で、ともによりよい未来を切り拓いて頂くことを心から期待申し上げ、代表質問といたします。