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ニュースリリース

【衆本会議】浅野哲議員が国民年金法等改正案に対する反対討論

 浅野哲青年局長(衆議院議員/茨城5区)は30日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった国民年金法等改正案に対する反対討論を行った。討論の全文は以下のとおり。

国民年金法等改正案に対する討論

令和7年5月30日
国民民主党・無所属
浅野 哲


 冒頭、本日朝の厚生労働委員会理事会で、委員長職権で質疑の終局、採決が進められたことに遺憾の意を表します。私は、只今議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案およびその修正案に対し、いずれも反対の立場から討論を行います。
 まず政府提出原案について反対の理由を申し述べます。年金制度は、高齢者の生活を底支えする基盤的な制度であるだけでなく、本制度を支えている現役世代にとっても、給付と負担のバランスが制度への信頼感、―すなわち老後への不安或いは期待に直結する、極めて重要かつ繊細な制度です。
 年金制度の財政検証結果を受けて、厚生労働省の年金部会では、制度の持続可能性を高め、給付と負担のバランスとその納得感を高めるための真摯な議論が重ねられてきました。これらの議論の上に、年金制度を国民から期待され、老後への不安を軽減させる制度へと見直していくことは、私たち立法府の責務であります。
 しかし、自民党内での事前審査は長期に及び、本法案が国会に提出されたのは5月16日。重要広範議案であった法案が、当初予定よりも2か月以上も遅れて国会に提出されるなど前代未聞です。また、遅れた理由も、参議院選挙へのマイナス影響を回避したい一部の自民党議員による慎重論が原因だと伝えられています。政策内容を真剣に議論していたならまだしも、選挙のために法案審議を避けようとしていたとしたら言語道断。その様な疑惑を晴らすためにも、自民党の皆様には二度とこのような疑念が生じないよう法案提出期限を遵守していただくよう求めます。
 我々は政府原案には反対ですが、評価できる点もあります。それは、被用者保険の賃金要件の撤廃や企業規模要件の撤廃等を通じて、労働市場に中立的かつ持続可能性の向上を図ろうとしている点です。また、在職老齢年金制度の見直しを通じた高齢労働者の働き控えの抑制策も、現場の声にかなったものと評価できます。しかしながら、政府原案には不足している要素が多数あることを指摘しなければなりません。
 まず、基礎年金の底上げに踏み込まなかった点です。自民党の事前審査の中でマクロ経済スライドの同時終了措置が削除され、将来の基礎年金支給額の所得代替率の低下に対する有効な手立てを失う内容となっています。次に、企業規模要件の撤廃に10年もかける内容ですが、これは余りにも長いと言わざるを得ません。この点については、次期財政検証をふまえた再改正までの間に完遂すべきです。また、企業規模要件を段階的に撤廃する期間中は、勤め先の規模によって被保険者になれる人となれない人が出てくるため、公平性を欠いていると言わざるを得ず、同様に、既設の個人事業所について「当面の間は適用事業所としない」とされていますが、新設の個人事業所が適用となるため公平性を欠いていると言わざるを得ません。
 さらに、遺族年金制度については、早くに配偶者を亡くした子のいない女性に対する遺族年金の支給期間が短縮される改正も盛り込まれており、これは男女差の解消という理由も示されているものの、その影響についてはさらなる慎重な審議が求められます。このように、政府提出原案には、具体的内容や公平性の観点から問題が多く残っており、賛成することはできません。
 続いて、自民党、公明党、立憲民主党提出の修正案について反対の理由を申し述べます。本修正案は、自民党が一旦削除したマクロ経済スライドの同時終了措置を復活させ、一部の減額影響を受ける方への配慮措置を設ける内容です。基礎年金の給付水準を中長期的に改善する部分は評価できるものですが、次回の財政検証が行われる2029年までに内容を検討し、その結果に基づいて措置を講じることとされており、十分な検討期間がある割に、修正案によって追加された検討項目は極めて限定的で不十分だと言わざるを得ません。
 例えば、5月27日に行った厚生労働委員会の参考人質疑では、全ての参考人が第1号被保険者期間を45年まで延長し、基礎年金の基盤を強化する必要性を指摘しました。これを受けて、先日の委員会で、修正案提出者に対し被保険者期間の延長を盛り込むべきと申し上げましたが、会期末までの時間がないことを理由に、議論は前進しませんでした。我々としては、2029年まで時間的猶予があるのであれば、なぜ、この国会で成立を急ぐのか理解しかねます。国民民主党は、臨時国会まで継続審議することも念頭に、十分な審議時間を通して法改正に取り組むべきであることを主張いたします。
 これに加え、与党と立憲民主党の修正案では明らかになっていない課題も多く存在します。例えば、基礎年金の底上げによって増大する公費負担分の財源確保策、老後不安を抱える就職氷河期世代に対する支援策、第三号被保険者制度の在り方についての検討など、責任ある制度設計の視点や、時代の変化に応える抜本的な制度改定の内容を欠いています。
 厚生労働委員会に私たち国民民主党が提出した修正案は、これらの内容を含んだ内容で、次回2029年の財政検証まで十分な期間があることをふまえ、より包括的な検討規定を整備しようとするものでした。財源確保策、就職氷河期世代への支援、第一号被保険者期間の延長や第三号被保険者制度の在り方の見直し―。これらは、近いうち検討の蓋然性が必ず高まっていくテーマであることを、壇上から、改めて主張させていただきます。
 さらに国民民主党は、年金制度に関わる国庫負担金の財源を安定化させるための「クローバック制度」、すなわち、基礎年金受給者の前年度の所得が一般的な必要生計費を大きく上回る場合に国庫負担分の支給額を調整させていただく制度や、2027年から米国でスタートする「セイバーズマッチ」についても、我が国の年金財政の安定化や国民の老後不安解消のために検討していくべきと考えます。
 最後に、今回の法改正は5年に1度の財政検証を受けて行う重要な機会であります。重要広範議案であるにもかかわらず、参院選への影響を懸念してか法案提出に二の足を踏んだ挙句、年金底上げという中心的な政策要素を削除したとされた一連の経過は、自民党の政権政党としての矜持を欠いた行動であり、大変残念に思います。他方、立憲民主党に対してもひと言申し上げます。野党第一党であるにも関わらず、重要広範議案の審査に当たって、他の野党との協議を横に置き、真っ先に与党との協議に突き進んだ一連の行動には、強い違和感を覚えざるを得ません。
 国民生活に密着した法案だからこそ、時間に追われ拙速な審議をすすめるのではなく、今できることと、次の財政検証までにやらなければならないこと、さらに長期的に取り組まなければならないことを整理した法律として、きちんと仕上げるべきです。政府原案および与党と立憲民主党提出の修正案については、法案の中身の不十分さはもとより、立法府として重ねるべき議論が重ねられていないことを指摘し、私の討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。

以上