「教育国債」の発行で、教育や科学技術など「人への投資」を倍増し、経済全体の生産性を向上させて日本の国際競争力を強化します。
幼稚園・保育園から高校までの教育完全無償化とともに、出産・子育て・教育にお金のかからない国を実現します。
児童手当や奨学金など子育て・教育支援策から所得制限を撤廃するとともに、年少扶養控除を復活、扶養控除を堅持します。公的医療保険に上乗せして徴収する子ども・子育て支援金制度を廃止します。女性の多様な生き方を支えます。また、性の多様性を尊重し、誰もが自分らしく生きていける社会をめざします。
人材教育、博士号取得者などの人材の積極的な採用増や処遇改善等の「人への投資」を増やした企業を評価する会計制度を導入します。
価格転嫁の促進や公的セクターでの賃上げも行い、公正な対価や賃金を払う社会をめざします。若年層が不合理な低賃金に抑え込まれるような賃金実態を是正します。
人材育成の強化を促進し、日本全体・地域の底力を引き出します。
1.教育国債の発行
「教育国債」で教育・科学技術予算を倍増し、「人づくり」を国の最重点政策として進めます(「人への投資」倍増戦略)。特に、基礎研究振興のための大学運営費交付金を増額し、大学・大学院に研究費や人件費を倍増することで、技術の基礎となる研究力をつけ、新たな商品開発力・品質改善力でのイノベーションを支えます。
教育や人づくりに対する支出は、将来の成長や税収増につながる投資的経費です。財政法を改正して、これらの支出を公債発行対象経費とする「教育国債」を創設します。毎年5兆円発行し、教育・科学技術予算を年間10兆円規模に倍増させます。
2.教育無償化の実現
すべての子どもが人生の平等なスタートラインに立つため、0~2歳の幼児教育・保育無償化の所得制限を撤廃するとともに、義務教育を3歳からとし、高校までの教育や子育てにおけるあらゆる施策を完全無償化します。
- 0歳児の見守り訪問無料(おむつ・ミルク定期便)、
- 18歳までの医療費無料、
- 小中学校給食無料(地産地消や有機食材を推進)、
- 公共施設入場料無料、
- 第1子からの保育料無料、
- 産後ケア無料、
- 乳幼児育児中の休息支援サービス(レスパイト)無料、
- 障がい児福祉無料、
- 妊婦健診(オプション検査)無料、
- 新生児スクリーニング検査無料、
- 学童保育・おやつ代無料、
- 教材費や修学旅行費
等無料。
また、塾代等の民間教育費を税金から控除する「塾代等控除」を創設します。
3.子育て・教育支援策の拡充と所得制限撤廃
児童手当や奨学金など子育て・教育政策の所得制限を撤廃します。
(1)児童手当の拡充
日本の将来を支える子どもを等しく支援するため、親の年収にかかわらず、第一子、第二子の児童手当を18歳まで一律で月額1万5000円に拡充します。
(2)全ての障がい児福祉に係る所得制限撤廃
子育て・教育支援策の所得制限撤廃の中でも、障がいのある子どもの養育に係る経済的な負担を軽減することは急務です。特別児童扶養手当や障がい児福祉に関する全ての公的給付の所得制限を撤廃します。特別児童扶養手当の水準を引き上げます。
(3)ひとり親家庭に係る所得制限撤廃
ひとり親家庭、特にシングルマザー家庭の養育費確保問題に取り組むとともに、児童扶養手当の水準を引き上げます。医療費等の所得制限等も撤廃します。
また、ひとり親家庭の生活の安定と向上に向け、副業・兼業者への労働時間・賃金の通算による社会保険等の適用に向け早急に取り組みます。
(4)公的給付金への非課税
「公的給付金非課税措置法案」の成立をめざします。出産や子どもの養育、教育などの公的給付等については、給付の効果が減殺されることがないよう所得税を課しません。
(5)男性の育児参画
男性を含め一定期間の育児休業機会の付与を事業主に義務化します。男女ともに育休中の賃金保障を実質100%とする雇用保険法改正を実現します。父母が互いに育児を支え合う夫婦協同育児(コペアレンティング)と子育てシェア等を推進します。
また、「育児休業」を「育児参画」に改称し、職場での男性の休みづらさを解消します。
育児休業者の代替要員確保等の支援を拡充します。
(6)保育の受け皿の整備・待機児童、待機学童の解消と子どもの安全
待機児童の解消のために、保育園と放課後児童クラブを積極的に増やします。全ての保育士等及び学童保育の職員の賃金を引き上げます。休日保育や休日学童保育、病児・病後児保育、障がい児や医療的ケア児の保育など多様な保育を充実させます。
(7)妊娠・出産に係る公費支援
卵子凍結支援など不妊治療への公的支援をさらに拡充します。不妊治療に対する社会的認知を進めます。また、小児、若年性がん治療薬の妊孕性温存療法(精子・卵子保存)を保険適用にします。
(8)日本型ネウボラの創設
保健師・医師等による妊娠時から高校卒業までの「伴走型支援」を制度化し、妊娠・出産、子育て期まで保健や子育ての支援が一体となった切れ目のないサポート体制(ネウボラ)を構築します。子育て世代包括支援センターにおける業務を拡充し、妊娠時から高校卒業まで担当の保健師・医師等に相談ができる体制と組織を構築します。
4.奨学金の拡充
(1)給付型奨学金の拡充
貸与型奨学金の所得制限を撤廃し、近い将来、奨学金の原則無利子化と返済不要の給付型奨学金を中所得世帯に拡大します。卒業生の奨学金債務も減免します。
(2)奨学金返済免除
公的資金や教育国債を活用して奨学金徳政令をめざします。当面は、専修学校や高等専門学校、大学や大学院等の高等教育の授業料を減免するとともに、既貸与者の奨学金については1人最大150万円まで免除するとともに、返済額を所得控除の対象とします。
さらに、人手不足が深刻な教職員や自衛官等に就業した場合は全額免除します。
また、卒業後就職した法人が奨学金貸与者の返済を支援した際、返済支援額を法人税の控除の対象とします。
(3)「仕送り控除」制度創設
地方出身学生(進学のために単身、もしくは寮等で生活している学生で、いわゆる自宅生に比べて居住費等の負担が重い者)の仕送り負担軽減のため、年間の仕送り額を所得控除の対象とするような「仕送り控除」制度を創設します。地方出身学生の親の二重負担(「学費」+「仕送り」)軽減は教育環境格差是正にもつながります。
5.子どもの安全
(1)通学時の子どもの安全確保
「児童通学安全確保法」を制定し、児童の通学中における安全の確保に関する基本指針等を定め、児童通学交通安全区域における交通の規制や道路の整備など対策を進めます。国が責任を持って体制を整備し、通学路などでの子どもの安全を守ります。
(2)エアコンの設置
全ての保育園・幼稚園・小中学校・高校へのエアコン設置(特別室・給食調理室・体育館含む)を国の補助によって実現します。
(3)児童虐待防止対策の強化
身体的虐待のみならず、性的虐待、心理的虐待、ネグレクト等、全ての虐待から子どもたちを守るための多機関連携と伴走施策を進めます。
まずは児童養護施設や一時保護所、児童相談所スタッフの増員とデジタル化、専門職の配置の他、子どもたちを取り巻く環境の整備が必要です。被虐待児の心身のケアと学習支援、虐待加害者等への生活支援、里親制度の更なる充実も併せて推進します。また、新たに法整備された「日本版DBS」法※を着実に実行するとともに、民間事業者にも性犯罪歴の確認を義務付け、子どもたちを性被害から守ります。
※日本版DBS法…幼稚園や小中学校等に就職希望者の性犯罪歴の確認を義務付ける法律
(4)子どもの死亡検証(チャイルドデスレビュー)の導入
医療機関や行政をはじめとする複数の機関・専門家が連携して、亡くなった子どもの事例を検証し、予防策を導き出すことで、子どもの死亡を少しでも減らします。
6.教育の充実
(1)給特法の見直し
学校教員の長時間労働の是正等、働き方改革に取り組むとともに、給特法(給料月額4%の教職調整額を支給する代わりに、超勤手当を支給しないと定める法律)は、廃止を含め、見直します。
(2)「教育DX」の推進
教職員の働き方改革及び問題発見能力・課題解決能力の育成を主眼とした個別最適学習の実現に向けて、デジタルの力を最大限に駆使した教育現場のDXを積極的に推進します。
(3)学校スポーツの指導者確保及び財政支援
部活動の地域移行に関する費用等も勘案し、児童手当のさらなる拡充や教育・保育サービスを受けられるクーポン券の発行(バウチャー制度)を検討します。学校スポーツの地域化が困難な地方では児童・生徒への財政的支援策を講じます。地域スポーツクラブ等がほとんどない地方での学校スポーツの地域化のためには満18歳以上の学生を含む指導者(教員等)の確保等、負担軽減にも取り組み、公的支援制度を構築します。学校の部活動や地域のクラブ活動への移行を踏まえ、学校と地域が協働・融合した形での地域におけるスポーツ環境整備の支援を行います。
(4)「部活動の地域移行」に関する積極的推進に関する各施策
学校と地域が協働・融合した形での地域部活動の環境整備のための支援を行います。
(5)地域スポーツ振興の支援促進
心身の健康の保持増進を担保する観点から、生涯スポーツを根幹に据え置いた地域スポーツ体制を推進します。また、スポーツを通じて平和外交に寄与します。
(6)不登校児童への教育の機会の保障
不登校児童への福祉・医療・家庭への経済的支援を省庁間の隔てなく、児童個々単位での適切な支援を強化します。そのために、子ども包括支援センターや小学校低学年から可能とする学校型不登校特例校の設置を推進します。また、規則正しい生活を送ることができ、子どもたちがすこやかに成長するため、自立支援学校の拡充をめざします。
(7)ギフテッドな子どもたちの能力を伸ばす教育
先天的にギフテッドと呼ばれる特性を有した子どもたちの能力を理解し、専門性を伸ばす教育制度を導入し、ギフテッドスクールも創設します。インターナショナルスクールを積極的に日本に誘致します。
(8)発達障がい児に対する適切な施策の推進
どのような子どもであっても学びの機会は保障されるべきで、そのための仕組みや環境作りを推進します。
7.人材育成の強化と職業訓練の拡充
研究・開発やものづくりの基盤を支える高度人材の育成を推進します。社会人の学び直し(リカレント教育、フリーランス、ギグワーカーなどに対応した教育・雇用環境を整備し、雇用労働者だけでなく社会人の学び直し、リスキリング教育)を支援します。
(1)「求職者ベーシック・インカム制度(仮称)」
雇用のセーフティネット機能を高めつつ、成長分野への人材移動と集積を進めるため、職業訓練と生活支援給付を組み合わせた求職者支援制度を拡充した「求職者ベーシック・インカム制度(仮称)」を構築します。また、資格取得等(大型一種、二種免許等)につながる教育訓練給付の更なる拡充、企業内の人材育成を図る若手・中堅の教育プログラム作成への支援をします。
(2)研究者の育成
任期付き採用が多く、賃金水準も低いため優秀な人材が海外に流出したり研究職を諦めている現状を打開するため、研究者の能力を正当に評価し報酬を支払う仕組みを整備します。
(3)EdTechの推進
人工知能、IoT、VR、生成AI、学習・教育効果の向上、自動化・効率化、価格破壊、市場創出等により、従来の教育の仕組みや産業構造に大きな変革を起こします。
8.働き方改革
(1)長時間労働の是正
勤務から翌日の勤務まで一定の間隔を空ける「インターバル規制」の義務付け、長時間労働の温床となっている「裁量労働制」の厳格化、労働時間管理の徹底、違法残業など法令違反に対する罰則の強化など、運送業や建設業などの2024年問題に代表される深刻な人材不足を解消するためにも実効性のある規制を設けます。
(2)「年収の壁(130万円の壁等)」の解消と働き方に中立な社会保障制度の構築
持続的な賃上げを実現するうえで障害となる「年収の壁」の解消をめざします。パート等短時間労働者が就業調整を気にすることなく、本人の意欲に応じて働き年収を増やすことができる制度となるよう、期限を決めて制度改革に取り組みます。また、社会保険の適用拡大の企業規模要件の撤廃を進め、働き方に中立的な制度への改革に取り組みます。
(3)労働者の保護
近年における企業組織の再編の状況等に鑑み、会社分割だけでなく事業譲渡の際にも労働契約や労働協約を新会社に継承できるように「労働契約承継法」の改正をめざします。勤め先が倒産したときの労働債権は他の債権に優先して支払われるように見直します。また、持株会社等が子会社等の従業員雇用に一定の使用者責任を負うよう企業組織再編における労働者の保護を整備します。
(4)労働力不足の対策
労働力不足が深刻な「運輸業・建設業」等の現業系職種の賃金を早期に増額し、当面は国による負担制度を構築します。
(5)育成就労支援
新たに始まる外国人労働者の育成就労制度については安価な労働力の確保策として悪用されないよう、厳格かつ適切な運用を求めます。また、育成就労制度と特定技能制度が一体的な運用となり、日本で働く外国人が特定技能制度2号になると家族帯同で永住できることから、来日する子どもや家族の日本語習得や学校での学習機会の確保等、国が主体的な対策を講じていくよう取り組みます。
(6)食事手当の非課税限度額の引き上げ
労働者の健康維持・増進のため、企業による食事補助の充実に向けて、食事手当に関する非課税限度額を6,000円程度に引き上げます。
(7)病気有給休暇の創設
病気の時のために年次有給休暇を残しておくという課題を解消し、年次有給休暇の取得を促進するために、年10日の病気有給休暇付与を創設します。
(8)職業訓練の権利保障
労働市場へ参入後に職業訓練を受ける権利と機会を保障する制度を検討します。
(9)労働災害防止対策
AI、IoT等の最新技術を活用して、労働災害を未然に防ぐための機器の開発・製造及びそれらを導入する企業への支援を積極的に展開します。安全人間工学を基礎とした安全管理技術の継承制度を創設します。採掘精製・製造等の現場及び職場等の安全衛生対策を目的とする設備投資や支出に対する税制優遇措置を設けます。
(10)ハラスメント対策
パワハラ・セクハラ・マタハラ・SOGIハラ等の職場におけるあらゆるハラスメント行為を法律で禁止します。また、就活生やフリーランスとして働く人に対するセクハラも法律で禁止します。悪質クレームの被害から労働者を守るための「カスタマーハラスメント対策推進法」を制定します。冤罪が起こらないよう対策を講じます。
9.就職氷河期世代支援
就職氷河期世代を中心とした中高年層における将来の年金不安に対応するため、厚生年金の「遡及納付」を可能にします。また、世代間公平とともに最低保障機能を強化した新しい基礎年金制度への移行を検討し、現役世代、将来世代を支えます。東京都によるソーシャルファームを国主導により全国展開します。公務員採用を拡大し、就職氷河期採用凍結による人材の世代不均衡を是正します。現在の求職者支援制度を拡充し、年齢制限のない職業訓練と生活支援給付等の支援を行います。切実な就職氷河期世代の親介護問題に対してビジネスケアラー支援策を充実します。対象業務の見直し(厳格化)などについて労働者派遣法の改正を検討します。
10.ジェンダー後進国脱却、多様性社会実現
女性差別撤廃条約選択議定書を批准し、教育、就職、賃金、経営、政治参加など、あらゆるライフステージと政策における男女格差をなくします。男女間賃金格差の是正、民間・公務の双方における女性労働者の非正規率の改善、採用活動におけるハラスメント防止などに取り組みます。(女性候補者の擁立目標や候補者支援策の詳細は4の(5))
女性管理職比率向上のための研修導入等を推進します。これまでのジェンダー関連政策に関して検証を行い、地方自治体とも協力して課題解決に努めます。
障がい、ヤングケアラー、不登校、引きこもり、外国ルーツ、性的マイノリティなどの全ての子どもが互いを理解し、共に学べる「インクルーシブ教育」の環境をつくります。
(1)生理の貧困
経済的な背景のみならず情報や教育の乏しさ等による「生理の貧困」に対応するため、生理用品の無償配布を行います。
(2)選択的夫婦別姓制度
選択的夫婦別姓制度を導入します。多様な家族のあり方を受け入れる社会をめざします。婚外子差別となっている戸籍法の改正をめざします。法の狭間で苦しむ無戸籍・無国籍問題についても引き続き取り組みます。
(3)働く女性の健康サポート強化
若年期からの月経随伴症状や閉経前後の更年期における労働環境の整備に取り組みます。更年期症状や生理痛、不妊治療に対する理解促進に向けた研修や休暇制度の導入を整備します。また、現行の生理休暇(労基法68条)を更年期症状や不妊治療など体調不良時に就業が著しく困難な場合にも利用できるものとし、取得が促進されるような名称に変更するとともに、取得した場合の所得補償を整備します。さらに、定期健康診断については性差を考慮した検査項目に見直します。また、フェムテック(女性の健康課題をテクノロジーで解決へと導く製品やサービス)の開発、導入を後押しします。
(4)ヤングケアラー対策
育児や介護、障がいのある兄弟のケアや通訳等を日常的に行っている子ども(ヤングケアラー)の実態調査を定期的に行い、効果的な支援の方法を調査研究するとともに、ヤングケアラーの子どもやその家族に対する福祉的・教育的な支援を恒常的に行うための「ヤングケアラー支援法」を制定します。
(5)ダブルケアラー対策
晩婚化・晩産化といった背景から子育てと介護が重なるダブルケアに苦しむ人が増加しており、実態把握のための調査を政府に義務付け、支援に向けた施策を行うよう政府に求める「ダブルケア支援法」を制定し、ダブルケアラーの支援を推進します。
(6)「可処分時間確保法」の制定
仕事の両立やリスキリングの時間を確保するなど、ケアに携わる人の「可処分時間確保法」を制定します。
(7)障がい者・難病患者政策
障がい者・難病患者が住み慣れた地域で安心して自立した生活が送れるよう、「障害者差別解消法」の実効性のある運用をめざします。障がいの有無などにかかわらず、同じ場でともに学び、働く「インクルーシブ教育・雇用」を推進します。また、大人の発達障がいへの社会全体での理解を促進するため、「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」の更なる実施等、国による啓発活動・指導等の強化に取り組みます。さらに、既存の発想にとらわれない新たな社会参加・就労機会の場を確保します。障がい者支援のため、優先調達の促進(就労支援施設からの自主製品の優先調達)をします。障がい児福祉に関する所得制限を早期に撤廃するとともに、障がい者に関する公的支援全般についても所得制限撤廃をめざします。
視聴覚障がい者などの自己選択と自己決定が実現できる社会環境を整備するため、手話言語法、情報コミュニケーション法を制定します。
(8)重度障がい者の自立支援給付に経済活動支援対象を拡大
障害者総合支援法に基づき、重度障がい者の日常生活及び社会生活に関しては、訪問介護や同行支援、行動支援などについて自立支援給付を受けられます。しかし、就労などの経済活動は給付の対象外となっており自立を妨げているとの指摘があります。そのため、重度障がい者の自立支援給付に経済活動の支援対象を拡大します。
(9)差別の解消
ヘイトスピーチ対策法を発展させ、人種、民族、出身などを理由とした差別を禁止する法律を制定します。また、性的指向、ジェンダーアイデンティティの多様性について、すべての国民が自然に受け入れられる共生社会の実現をめざします。
(10)外国人との共生
外国人の受け入れは、その能力が存分に発揮され、日本国民との協働・共生が地域社会や生活の現場においても推進されることが大前提です。困難な状況となっている地方における人材の確保、多様な言語に対応したワンストップセンターの整備など、地方自治体などに対する支援を強化します。また外国人児童・生徒の言語支援を強化するとともに不就学・進学の課題に取り組みます。育成就労の制度化にあたり、人権が保護されるよう、労働者としての権利性を高めます。
11.現役世代・次世代の負担の適正化に向けた社会保障制度の確立
働き続けたいシニア世代が健康でイキイキと働き続けられるよう、健康寿命延伸に向けた取り組みの充実を図るとともに、高齢者の積極採用などを企業に促します。住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・早期の認知症対策を含めた医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の取り組みを拡充、強化します。公立・公的病院支援等を行いつつ、地域にふさわしいバランスのとれた医療・介護サービス提供体制を構築する「地域医療介護構想」を実現します。人生100年時代を支える持続可能な社会保障制度を構築するためにも、医療DXの推進を通して医療の質の向上と効率化を図ります。
(1)年齢ではなく能力に応じた負担
年齢ではなく負担能力に応じた窓口負担にします。健康余命の伸長や高齢者のライフスタイルの多様化を踏まえ、後期高齢者の医療費の自己負担について原則を2割、現役並所得者(従来の就労所得に加え金融所得、資産も含める)を3割にします。また、「現役並所得」の判断基準について、従来の年金所得・就労所得に加え、金融所得、金融資産等の保有状況を反映させることで、世代間の支え合いに加え、“世代内”での支え合い機能と公平性を高めます。
高額療養費の自己負担限度額について経済状況に応じた設定を検討します。
医療・介護・障害福祉等にかかる自己負担の合計額に上限を設ける総合合算制度を創設します。
(2)後期高齢者拠出金への公費投入増
現役世代の社会保険料負担(天引き)の内、およそ半分を占める高齢者医療制度(後期高齢者拠出金、前期高齢者納付金)や次世代に対する支え合い分について、本来の制度趣旨を鑑み、現役世代だけではなくあらゆる世代が負担する公費投入を行います。その財源として、国民の安定的な資産形成の促進に配慮しながら、富裕層の保有する資産への課税等を検討します。
(3)保険給付範囲の見直し
市販品として広く定着した銘柄と同一の製品(いわゆるOTC類似薬)について公的医療保険の対象から見直し、セルフメディケーションを推進します。
年齢ごとに健康に生活できる状況を維持するのにかかる医療の費用対効果評価が低いものについては公的医療保険の対象から見直します。
また、保険外併用療養費制度 (評価療養、選定療養など)の弾力化を図ることで、難病ならびに希少疾病患者等に対する治療の選択肢を増やすとともに、先進的な医療の導入促進を図ります。医療アクセスの妨げとならないよう、特定の患者に対する保険外療養の経済的支援(予算措置)や、先進医療に対する民間保険の活用を図ります。
(4)ヘルスリテラシー教育の推進
国民が正確な知識に基づき、正しい判断と行動がとれるよう、負担と給付に代表される社会保障の仕組み、さらには薬物乱用等の不適切使用を抑止するための医薬品の適正使用、ワクチン・予防接種に関する基本知識などのヘルスリテラシーについて、平時からの教育や啓発の強化を進めます。
(5)セルフメディケーションの推進
安全性が高く効き目が確認されている医療用成分のスイッチOTC化を積極的に進めることで、国民の健康維持にかかる意識を向上させるとともに、医療費適正化に繋げます。また、自身の健康状態を把握して疾病の早期発見、早期受診を促すため検査薬のOTC化を推進するとともに、セルフメディケーション税制の普及に努めます。
(6)中間年薬価改定の廃止
後発医薬品の安定供給を図るとともに、我が国における新薬創出を促進するため、中間年薬価改定を廃止し、経済成長率を踏まえた新たな薬価改定ルールを策定します。そのため、中央社会保険医療協議会の構成を見直し、医薬品関連業種の代表者を加えます。
(7)予防医療・リハビリテーション
健康寿命を延ばすため、認知症予防を含めた予防医療やリハビリテーションを充実させ、フレイル(加齢とともに、筋力や心身の活力が低下し、健康な状態と要介護状態の中間状態になること)予防を促進させます。また、国民ひとり一人が医療や社会保障にかかる正確な知識に基づき、正しい判断と行動につながるよう、平時からの教育を充実し、政策制度の工夫を図ります。
(8)医療提供体制の充実
医療従事者の長時間労働の是正、不要な業務の削減につながる規制改革、女性医療従事者の就業継続・再就業支援などにより、医師・薬剤師・看護師を確保します。さらに、医療DXの推進による保険医療の高度化・効率化を通じて、質の高い医療を受けられるようにします。(詳細は3の11の(11))
また、限りある医療財源・資源を効率的に提供するために医療機関の機能や役割分担を整理したうえで、かかりつけ医機能の強化をはじめとする医療提供体制の見直しを図ります。また、初期医療を担うかかりつけ薬局を制度化(日本版CPCFの導入)するとともに医師・看護師・薬剤師等の役割を再編します。
(9)地域医療のあり方の見直し・日本版GP制度の創設
地域の医療介護の窓口として、プライマリケア(総合診療)制度を推進し、必要な医療や介護を無駄なく漏れなく、お住まいの地域で受けられるようにします。
過疎地域を中心とした医療の経営基盤を支えるため、「日本版GP(かかりつけ医)制度」ならびに診療報酬の包括支払制度や人頭払制度等について検討します。
(10)地域における患者アクセスの確保と医療経営の安定強化
将来にわたって地域で医療サービスを受け続けられるよう、連携機関がグループで対応することで
- 診療機能の集約化・機能分担、病床管理
- 医療機器の共同利用、
- 地域フォーミュラリ(医薬品の使用指針)の導入、
- 人的資源の派遣体制の整備
等を推進し、地域医療連携の強化を図ります。また、医療圏単位での全診療科が設置できるよう、診療報酬上の評価にメリハリをつけることによって地域医療の安定強化と医師の偏在(地域及び診療科目)を解消します。
(11)医療DXの推進による保険医療の高度化、効率化
「公的介護費や生産性損失」を含む医療経済学や個人医療記録の収集・分析に基づく科学的・客観的な保険給付範囲の設定により、医療給付の効率化を図るとともに、新規医療技術の開発ならびに医療市場の拡大を推進します。また、診療所(保険医)におけるオンライン診療の要件化の推進により当面の医療空白地対策等を行い、患者の利便性を高めます。電子処方箋や電子カルテの義務化ならびに「全国医療情報プラットフォーム」の整備推進により、医療情報を共有化し、医療と介護の連携強化や重複投薬等を削減します。
(12)勤務医の働き方改革
勤務医の業務量削減のため、コ・メディカル(病院薬剤師、特定看護師、看護師等)への更なるタスクシフトやタスクシェアなどにより、働き方改革を推進します。
(13)法整備も含めた終末期医療の見直し
人生会議の制度化を含む尊厳死の法制化によって終末期医療のあり方を見直し、本人や家族が望まない医療を抑制します。
(14)介護サービス・認知症対策の充実
介護サービスの質を確保し、いのちや暮らしの基盤を立て直すため、政府が引き下げた訪問介護の基本報酬を引き上げ、全ての介護職員の賃金を引き上げます。また、かかりつけ医と訪問看護など医療と介護の連携推進、在宅サービスの充実、配食や見守りなどの促進を行い、「地域包括ケアシステム」の取り組みを拡充、強化します。さらに、認知症予防事業や認知症患者の徘徊対策などを推進します。介護職員の質を担保するために介護福祉士の上位資格「地域包括ケア士(仮)」を制度化し報酬に反映させるようにします。
(15)介護研修費用補助
介護職員の人材確保と職場への定着を図ることを目的として、介護職員研修(初任者研修・実務者研修・介護支援専門員実務研修)を修了した方に研修費用の一部を補助します。
(16)介護福祉士国家試験に母国語併記
外国人介護人材を受け入れていくにあたり、介護福祉士国家試験が日本語のため、合格率が低い状況にあり帰国してしまうケースが多いのが現状です。日本語に合わせて母国語を併記してもらい、資格の取得がしやすい環境を整備することにより、外国人介護人材が将来にわたり日本で活躍しやすい環境を整備します。
(17)ケアマネジャー更新研修の廃止、負担の軽減
現在、ケアマネジャー(介護支援専門員)業務に従事するためには5年毎に研修を受ける必要があります。研修内容は都道府県によりばらつきがあり、長時間の研修や研修費用等は受講者に大きな負担が強いられます。そのため、ケアマネジャーの更新研修を廃止します。また、現在の都道府県主体の体制を見直し、全国一律でケアマネジャーの質の確保を図ります。
(18)介護と仕事の両立支援
介護休業の期間を延長したり、介護休暇を時間単位で取得できるようにするなど、介護する家族の立場に立って、介護と仕事が両立できる環境を整えます。
(19)孤独・孤立対策
国による初の実態調査によって全世代の約4割が孤独であると回答し、中でも最も孤独感が高いのは20-29歳の若者で、失業者・男性単身者・公営住宅居住者も孤独感が高いことが判明しました。「生きる権利」を行使するために、無料のセーフティネットの拡充を進め、相談しやすい体制の整備を図ります。
これまでの孤独・孤立対策や自殺対策(特に若年層や子どもの自殺)を検証します。メディアによる自殺報道にWHOガイドラインに即したルールを策定します。相談や支援につながる「タッチポイント」や地域における「つながる場」を増やすとともに、ボットも活用した24時間365日チャット相談体制を構築し、相談への応答率向上のための人材を育成します。孤独・孤立に対するリテラシー教育とスティグマ(偏見や差別、負のレッテル)対策を推進します。ソーシャルワーカーの養成を推進することや民生委員・児童委員の経済的負担を軽減することなどにより、地域で相談や支援活動を行う人材として子ども若者民生委員、デジタル民生委員等を設置します。孤独な育児による産後うつを予防するための産後ケアや睡眠指導、レスパイト(休息)の推進と無償化を進めます。高齢者の孤独・孤立対策として、地域企業と連携した見守りサービスの構築やAIを搭載したコミュニケーションロボット等購入のための補助金制度を創設します。
(20)ギャンブル依存症対策
急増するオンラインカジノなどを含むギャンブル依存症対策に取り組みます。